ステムリムの公募割れから考える、バイオベンチャー株投資

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投資家からの人気も高く、購入希望者は抽選となることが当たり前になっているIPOでは、ほとんどの場合上場時の初値が公募価格を上回り、投資家にとってプラスとなっています。しかし、中には初値が公募価格を下回る公募割れとなるIPOもあり、ステムリムもそのうちの1社です。
しかし、ステムリムの場合は企業の問題というよりも、そもそもバイオベンチャーという業界自体の問題と考えられているのですが、バイオベンチャー株に投資することはどのような結果になるのでしょうか?

ステムリムのIPOを振り返る

まず、ステムリムのIPOがどうなったのか、振り返ってみましょう。
2019年8月に行われたステムリムのIPOは、SMBC日興証券が主幹事して74.27%を引き受けて行われ、公募株数は810万株、売り出し株数は30万株となっていました。当初の予定では、公募株数が600万株で売り出し株数は240万株となっていたのですが、仮条件を決める際に公募株数を増やし、売り出し株数を引き下げることになったそうです。
また、仮条件は1,000円から1,700円となっていましたが、想定仮条件の段階では2,370円から3,730円でした。その段階では、時価総額が最大で2,000億円近くとなることが想定されていたのですが、その後機関投資家向けの説明会が行われた際に、そのフィードバックを受けて仮条件を決定する段階で想定仮条件では高すぎると判断され、大幅に価格を引き下げた仮条件となったのです。そして、IPOでは多くの場合、仮条件の上限価格が公募価格となることが多いのですが、ステムリムでは公募価格も仮条件の下限となる1,000円になってしまいました。売り出し株数も大幅に減少したことで、上場時の株式時価総額も想定額の3分の1程度という結果になっています。
そして、IPOの結果は初値が930円と、公募価格を70円下回って7%の公募割れという結果になりました。この株価は、2019年10月現在も900円前後で推移しています。
公募割れ自体は年に数社あるので珍しいというほどではないのですが、想定仮条件からこれほど大幅に仮条件が引き下げられ、さらに公募価格が仮条件の下限となったIPOはかなり珍しいでしょう。なぜ、このようなことになったのでしょうか?

バイオベンチャー株の厳しさ

バイオベンチャー株というのは、それ以外の業界とは別の物と考えるべき、といわれるほど特殊な企業です。なぜかというと、ほとんどの場合は現在新薬の研究・開発を進めている段階での上場であり、将来的な業績が予測し辛いからです。
バイオベンチャーには様々な企業がありますが、それぞれ開発している医薬品などは異なります。そして、医薬品を開発している段階では研究費用がかさむため、その資金調達という意味もあってIPOを行うのですが、開発段階でバイオベンチャー株に投資する事には大きなリスクが付きまといます。
例えば、いくつかの医薬品を既に開発していて、販売している段階であっても研究には多額の費用が掛かるので、業績としては赤字であることが多いでしょう。ましてや、ほとんどのバイオベンチャーでは販売している医薬品がない状態であるため、その赤字額はかなりのものとなります。
そんな状態で、どうやって企業として成り立っているのかといえば、大手製薬会社などと契約して契約金を得て、研究費用にしていることが多いのです。この研究費用だけで黒字となっているバイオベンチャーもあるのですが、そんなことは滅多にありません。
また、研究を進めていくにしてもその結果が出るまでにはかなりの時間がかかります。まず想定した結果を得られる医薬品を開発できるかどうかという点があり、その開発した医薬品で動物実験を繰り返して、その後臨床実験を経て治験を何度か行い、結果に問題がなければ晴れて医薬品として申請をして認可されれば市販できる、という流れになるため、実際の収益につながるまでは非常に長い時間がかかるのです。
その上、臨床実験をクリアして治験にまで及んだ医薬品のうち、実際に認可されて販売される可能性はおよそ12%といわれています。臨床実験までたどり着く時点でかなり候補が絞られているので、開発を始めた医薬品から考えると販売される医薬品というのはごくわずかだということが分かります。
上場した後で医薬品を開発できなかった場合はどうなるかといえば、まず大手製薬会社との契約はある程度の年数が経過した後でも結果が出なければ契約が終了するでしょう。そうなると、これまで得られていた研究費用がなくなり、開発中の医薬品のうち可能性が低いものから順に、開発を中止することになります。そうなってくると、赤字は拡大して投資家から集めた研究費用を食いつぶしていくこととなり、開発に協力する企業が他に見つからない限りは開発が終わるか費用が尽きるかの競争になってしまいます。開発が終わる前に費用が尽きれば倒産となることを考えると、バイオベンチャー株への投資はかなりリスクが高いということが分かるでしょう。
また、同じような医薬品を他社が先んじて開発成功してしまった場合、先にシェアを奪われることになるのでその後の業績にも期待できなくなってしまいます。そういった点でもリスクが高いので、機関投資家はバイオベンチャー株の保有比率がかなり低く、ほとんどを個人投資家が保有しているのです。
ただし、そのリスクがある一方で、全く新しい画期的な医薬品を開発することができれば業績も一気に好転して、大幅な利益増となる可能性もあるのがバイオベンチャー株です。保有している投資家は、そういった点にも期待しているのでしょう。

ステムリムの問題点

ステムリム自体が抱える問題点としては、開発の進み具合にあります。開発を始めている品目自体はそれなりにあるのですが、そのうち臨床実験まで進んでいるものはわずか2品目しかなく、さらに開発が最も進められている医薬品については気象疾患の治療薬のため、市場規模が限られていることから売り上げとしてはあまり期待できません。さらに、もう一つの品目は需要が高い医薬品ではあるのですが、臨床実験自体は契約している製薬会社である塩野義製薬が行っているため、詳細については不明という状態でした。
過去5年間の経常利益を見てもほぼ赤字で、今後の見通しも不透明ということになると、やはり投資家としても敬遠してしまうのは仕方がないのではないでしょうか。ただし、現在ステムリムが開発している医薬品の中には、再生医療など開発に成功した場合はかなり期待が持てるものも含まれています。今後、開発に成功の目処が立った場合は、ステムリムの人気も大きく高まる可能性もあるので、研究の進み具合には注目しておくべきでしょう。とはいえ、再生医療は現在大きな注目を集めている分野なので、ライバル会社に先んじて開発できるかどうかが重要となるでしょう。

まとめ

かつて、日本の株式市場ではバイオベンチャー株に高い関心が集まっていたこともありましたが、現在では開発がなかなか進まないこともあり、バイオベンチャー株は危険だから手を出さない方がいい、という考え方が主流となりつつあります。
実際に、バイオベンチャーは多額の研究費用を必要とする上で開発に時間がかかり、開発に成功するかどうかも分からない状態なので、成功した場合には大きなリターンが期待できるもののかなり不安定であることは間違いありません。今後、バイオベンチャー株のIPOが行われる際も、内容はよく吟味してから参加した方がいいでしょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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