株式相場のアノマリーとは?
相場にはアノマリーと呼ばれるものがあります。株はもちろん、為替、商品など、様々な投資商品の相場で、「〇月は上昇しやすい」「×曜日は下落しやすい」などとまことしやかに言われているものがあります。中には迷信と言えるものや、昔はそうだったけれど今は違うというものもあるようですが、この相場におけるアノマリーは意外にバカにできません。
そこで今回は、株式市場におけるアノマリーについて解説します。
先ほど書いたように、相場には「この月は上がりやすい」「この曜日は下がりやすい」といったものから、「満月は高値、新月は安値」「阪神タイガースが優勝すると株高」といったものまで様々です。アノマリーの中には根拠がありそうなものもありますが、中にはこれといった根拠が無さそうなものもあります。
例えば株式相場で言われるアノマリーの中でよく言われるのが、4月は上昇相場になりやすいというものがあります。
4月が上昇相場になりやすいのには、日本における機関投資家の動きが関係しています。日本では機関投資家が新規ポジションを持つからです。機関投資家…つまり、年金基金や信託銀行等の会社の決算は大体3月です。そして、新年度となる4月に新たな資金で株などの投資商品を買い、ポジションを建てるわけです。このような機関投資家の動きにより、4月は株価が上昇しやすくなります。
なお、翌月の5月になると株価は下落しやすくなります。一つの理由として考えられるのが、海外のヘッジファンドなど海外機関投資家の決算は5月が多いということです。日本の株式市場は海外投資家の割合が高く、6割以上が海外のファンドとなっています。そのため、5月は欧米の相場の格言「セル・イン・メイ」の通り、現在は下落しやすい傾向にあるのです。
また、12月も上昇しやすいと言われている月の一つです。12月は機関投資家が運用しているファンドの評価額を押し上げるためにお化粧買いが行われていることが原因だとみられています。
また、下落しやすい月もあります。先ほど書いた5月の他に、9月や10月は下落しやすいというアノマリーがあります。9月には過去にリーマンショックが起こり、10月にはブランクマンデーが起こっています。このことも、9月と10月が下落しやすい月であるとのイメージを強めている原因ではないかと考えられます。しかし、これは単なるイメージというだけではなく、やはり9月と10月は株価が下落しやすく、その理由として欧米のヘッジファンドが11月の決算を前に、9月から10月にかけてお化粧買いをすることが理由であると考えられています。また、7月~9月は欧米では夏休みを取る人が多いため、製品の受注や出荷が下振れしやすいという特徴があります。この7月~9月の企業の業績やそれに関する指標が発表されるのが9月から10月にかけての期間であるため、この期間に発表された企業業績や指標を受けて欧米の株式市場が下落し、日本の株式市場にも波及する、ということが考えられるのです。
アノマリー投資とそれに合った銘柄の選び方
上で紹介したように、株式市場では月ごとのアノマリーがあります。もちろん、「そうなりやすい」というだけで、必ずそうなるわけではありません。特にこのところは、トランプ米大統領がTwitterで自分の意見や見解などを発信しているため、これにより株式相場が大きく動くことが珍しくありません。例えば、米中貿易協議に関し、G20での米中両国首脳による会談が行われるか否か、という問題についても、トランプ米大統領は「習近平中国国家主席がG20に参加しない場合は、米国はただちに対中追加関税を実施する」との中国に対する圧力をTwitterに投稿しています。この投稿に関しては、株式市場よりも為替市場での反応が大きかったのですが、国のトップによるSNSへの投稿が相場に与える影響は大きく、このことが、月ごとのアノマリーを狂わせる原因になることも珍しくありません。
このことを踏まえ、「絶対的なものではない」と理解した上で、アノマリー投資について考えてみましょう。
前半で書いたアノマリーを基にしたアノマリー投資を行うには、ある程度の投資期間が必要になります。そのため、デイトレなどごく短期間での投資を考えている人には向かない投資法であることを念頭に置きましょう。また、取引する銘柄も、日経平均株価に連動しやすい銘柄を選ぶと良いでしょう。日経平均株価に連動しやすい銘柄は、基本的には大型株が中心になります。大型株は機関投資家の取引が多く、資金量の豊富な機関投資家の売買が株価を動かします。一方、中小型株、その中でも特に小型株は個人投資家の売買が多いケースが多く、その場合は日経平均株価の動向に連動しないことも珍しくありません。
個人投資家の取引が多い銘柄は、動きが読みにくいものが数多くあります。なぜなら、機関投資家はファンダメンタルズ分析を中心に株を売買するのに対し、個人投資家はテクニカル分析を中心に取引をする人もいれば、ファンダメンタルズ分析を中心に取引をする人もいるなどバラバラです。また、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などは関係なく、独自の観点で取引する人もいます。例えるなら、交通ルールのない道路のような状態です。機関投資家の割合が多い銘柄の場合、ファンダメンタルズ分析という“ルール”に則って取引する分、動きが読みやすくなります。
なお、大型株だからといって、すべて日経平均株価に連動するわけではありません。また、機関投資家の多くがTOPIXをベンチマークするため、大型株の全てが日経平均株価と連動するわけではないことに注意しましょう。
なお、株価指数との連動を見る指標にβ値がありますが、このβ値には、TOPIXとの連動を見ているもの、日経平均株価との連動を見ているものがあるため、どちらの株価指数との連動を見ているのかをきちんと調べる必要があります。例えば、TOPIXとの連動を見たβ値の場合、β値が1の銘柄は、TOPIXが一定期間に1%上昇すると同じようにその銘柄も1%上昇する、ということになります。β値が2になれば、その銘柄は2%上昇することになり、TOPIXに比べて2倍ボラティリティが高い、ということが言えます。反対に、β値がマイナスになるケースもあります。例えばβ値が-1の場合は、TOPIXが1%上がった時、その銘柄は1%下がることになり、TOPIXとは反対の動きになると言えます。
対日経平均株価のβ値を知りたいのであれば、エクセルなどを使って自分で計算する方法もありますが、少々手間がかかります。そのような銘柄のスクリーニングができる機能を提供している証券会社もあるので、そちらで口座開設をし、スクリーニング機能を利用するのも一つの手です。
このようにして日経平均株価と連動する銘柄を探したとして、どのタイミングで株を買うのか、ということが問題になります。これについては、10月の軟調な相場を見て、買うタイミングを見計らうと良いでしょう。もちろん、個々の銘柄によって異なりますが、1つ知識として知っておくとよいのが、11月の中旬はヘッジファンドの換金売りが多くなりやすいということです。そのため、銘柄によってはこの時に底値になる銘柄もあります。完全な底値をとらえることは難しいので、「底に入ったんじゃないか」というタイミングで買うのが良いでしょう。
まとめ
今回は株のアノマリーとアノマリーを利用した投資について解説しました。株式市場でまことしやかに言われているアノマリーは、「必ずそうなる」というものではありません。ですが、言われているとおりになりやすい傾向にある、というものもあります。
仮に株式市場がアノマリー通りの動きをしても、個別銘柄がそのような動きにならなければ全く意味がないので、アノマリー投資をするのであれば、株式市場全体の動きに連動しやすい銘柄を選ぶ必要があります。そのために、今回解説したβ値を参考に銘柄を選んでみてはいかがでしょうか。