株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~投資キャッシュフロー・財務キャッシュフロー

株式投資の基本

投資キャッシュフローと4つのステージ

前回、営業キャッシュフローと会社の4つのステージについて解説しました。今回も、キャッシュフローと会社の4つのステージの関係性について解説します。

営業キャッシュフローは、初期段階と衰退段階の時にマイナス、成長段階と成熟段階の時にプラスになると前回書きました。では、他のキャッシュフローは4つのステージでどのようになるのでしょうか。

では、さっそく見てみましょう。見たいのは、投資キャッシュフローです。投資キャッシュフローは、初期段階、成長段階、成熟段階でマイナスになり、衰退段階でプラスになります。どうしてでしょうか?

投資キャッシュフローとは、設備投資などに投資したお金の出入りです。例えば、土地や建物、機械など有形固定資産や、ソフトウェアや知的財産のような無形固定資産の取得や売却の結果、プラスになったのか、あるいはマイナスになったのか、ということが投資キャッシュフローから分かります。ちなみに、有形固定資産・無形固定資産の取得や売却以外にも、有価証券や投資有価証券の取得や売却にお金を使った場合にも投資キャッシュフローに分類されます。さらに、現金等の貸付・回収も同様です。なお、有価証券や投資有価証券の取得や売却に関しては、これが子会社の株式の場合は、財務キャッシュフローに分類されるケースもある、ということを覚えておくと良いでしょう。

先述のとおり、初期段階、成長段階、成熟段階で投資キャッシュフローはマイナスになります。初期段階の場合、これから会社をスタートさせるために、様々な設備などにお金を使います。また、成長段階になると、事業を拡大するために積極的に設備投資にお金を使います。例えば、新しい工場を立ち上げたり、そのための土地を取得したりといったことをしますので、出ていくお金が多くなるわけです。成熟段階でも、例えばこれまであった機械を新しいものに替えるなど設備投資にお金を回すため、有形・無形固定資産を売却して入ってくるお金よりも、取得するお金の方が大きくなります。

有形固定資産や無形固定資産の取得・売却を分かりやすく例に挙げましたが、初期段階、成長段階、成熟段階の場合は、投資キャッシュフローはマイナスになります。設備投資にお金を使ったり、他の企業にお金を貸したりするだけの余力がある状態のため、出ていくお金の方が入ってくるお金よりも多くなってしまうのです。

なお、衰退期の会社の場合、投資キャッシュフローはプラスになります。業績が悪化し徐々に事業を縮小していく時に、これまで保有していた土地や建物、機械などを売却したり、他の企業に貸したお金を回収したりします。また、会社で持っていた株などを売却して現金化するため、投資キャッシュフローがプラスになるのです。

このことから分かるとおり、投資キャッシュフローに関しては、マイナスの場合はその会社がある意味で健康な状態にあると言えるでしょう。前回も例に挙げましたが、例えば製薬ベンチャー企業の経営状態を計る際にも投資キャッシュフローは役に立ちます。

製薬ベンチャーは新薬の開発に多額のお金を使います。研究・開発に非常にお金がかかる一方で、新薬が認可され上市するまでは思うような売り上げが出ないため、コストを差し引くと赤字になってしまうことが珍しくありません。新薬の上市まで、資金調達しては資金を食いつぶし、また新たな資金調達をしては資金を食いつぶし…ということを繰り返します。そのため、決算短信のサマリーを見ると、「こんなに赤字ばかり続いて大丈夫なの?」と思うような弱い内容になっているため、投資意欲が湧く銘柄であるとは言いづらいでしょう。ですが、その赤字は積極的に研究開発にお金を使っているからかもしれません。倒産間近で赤字なのか、あるいは積極的な投資の結果、赤字になっているのかを知るためには、投資キャッシュフローの確認が不可欠です。もし、投資キャッシュフローがマイナスになっているのであれば、研究開発にお金を使った結果、赤字になっているのだと判り、製薬ベンチャーとしては正常な状態にあると考えられます。

財務キャッシュフローと4つのステージ

次に、財務キャッシュフローについて解説します。財務キャッシュフローは資金調達や返済によるお金の出入りを表しています。資金調達に関し分かりやすのは、例えば銀行からの借り入れです。営業活動や投資活動を行うために銀行から融資してもらい、それを会社の運転資金にします。また、資金調達には増資もあります。株式を発行し、投資家に買ってもらうことで資金調達を行います。この他に財務キャッシュフローに該当するものとしては、社債があります。こちらも社債を発行し、投資家に買ってもらうことで資金を調達します。

これら資金が調達されれば、会社にはお金が入ってくることになります。反対に、借入金の返済や社債の償還を行った場合は、会社からお金が出ていくことになります。なお、この他に配当金の支払いも財務キャッシュフローに分類されます。

それでは、4つのステージそれぞれの財務キャッシュフローの状態はどうなるでしょうか。

初期段階や成長段階の場合、財務キャッシュフローはプラスになります。初期段階は営業活動や投資活動のために資金調達しなければなりません。また、成長段階の場合も、さらなる事業拡大のために積極的な資金調達を行う必要があります。銀行などから調達したお金の返済よりも借入の方が多くなるため、財務キャッシュフローがプラスになってしまうのです。

一方、成熟段階に入ると、ある程度事業も軌道に乗り安定してきます。成長段階のような積極的な借り入れをする必要はなく、社債や増資などを頻繁に行い資金調達する必要もなくなり、これまで借りたお金の返済や社債の償還、そして投資家への配当に力を入れ始めます。そのため、成熟段階の場合は、財務キャッシュフローはマイナスになります。

衰退期に関しては、財務キャッシュフローはプラスの場合もマイナスの場合もあります。徐々に事業規模を縮小する中でも借入金の返済や社債の償還は行われます。一方、状況に応じ、追加の借入や社債発行、増資を行うケースもあります。そのため、状況によってプラスになる場合もマイナスになる場合もあるのです。

会社の4つのステージとキャッシュフローの状況

前回から今回にかけて、会社の4つのステージとそれに応じたキャッシュフローの状況について解説しましたが、その内容をまとめると、

〇初期段階
・営業キャッシュフロー…-
・投資キャッシュフロー…-
・財務キャッシュフロー…+

〇成長段階
・営業キャッシュフロー…+
・投資キャッシュフロー…-
・財務キャッシュフロー…+

〇成熟段階
・営業キャッシュフロー…+
・投資キャッシュフロー…-
・財務キャッシュフロー…-

〇衰退段階
・営業キャッシュフロー…-
・投資キャッシュフロー…+
・財務キャッシュフロー…+または-

ということになります。

まとめ

今回も前回に引き続き会社の4つのステージごとのキャッシュフローの状況について解説しました。今回は投資キャッシュフローと財務キャッシュフローの状況について説明しましたが、先ほど書いたように、初期段階、成長段階、成熟段階、衰退段階のそれぞれのステージで、キャッシュフローのプラスとマイナスは異なります。その会社が現在どんなステージにあるのかを把握することは、投資においてとても重要です。決算短信のサマリーを見る際、売上高や営業利益などをチェックするのはもちろん、これらキャッシュフローの状況がどうなっているのかについても必ずチェックしましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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