株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~自己資本比率①~

株式投資の基本

自己資本比率について

前回、営業キャッシュフローと会社の4つのステージがどのような関係になるかということを解説しました。今回も、決算短信について見てみます。

今回チェックしたいのが、自己資本比率の部分です。自己資本比率が株価の動向に影響を与えることは少ないものの、投資判断には絶対に欠かせない指標です。自己資本比率が高い会社ほど倒産しづらく、体力のある会社ということになるからです。そのため、特に中長期で株式投資を考えている人は、これから投資する銘柄の自己資本比率を必ずチェックしましょう。

そんな自己資本比率ですが、果たして何をどう確認すれば良いのでしょうか。そして、どれくらいであれば問題ないと考えられるのでしょうか。

以前も自己資本比率について触れたことがありましたが、どのくらいが適正か、というのはなかなか難しい問題だと言えます。株式投資や会計などの本を読むと、自己資本比率の適正値として、だいたい40%~50%くらいの数値が挙げられていて、中には、60%以上を目指すと良い、という意見もあります。様々な意見がありますが、もしもある程度の期間その銘柄を保有しようと考えているのであれば、自己資本比率50%以上を一つの目安にすると良いでしょう。

このように書くと、「自己資本比率50%以上ということは、50%よりは60%、60%よりは70%の方が良い会社ということだろう」と思うのではないでしょうか。財務状況だけを見れば、当然のことながら自己資本比率の高い方が、財務は安全な状態にあると言えます。そのため、自己資本比率100%の会社は、財務状況が非常に良い会社ということになるのです。ですが、自己資本比率が高い会社ほど成長しているのかというと、それはまた別の話になります。前回解説した会社の4つのステージに絡めて考えてみましょう。

例えば、成長段階にある会社の自己資本比率が100%だったらどうでしょうか。会社の事業拡大期で、これからさらなる業績アップのためにどんどん投資をしていかなければなりませんが、そんな中、全くの無借金の状態が続いているということは、果たして積極的に投資しているのでしょうか?つまり、これから成長しようという時に、設備投資などにお金を使っていないのではないかということが考えられるのです。もちろん、設備投資などにお金をきちんと使っているかどうかは、投資キャッシュフローの状態を確認する必要がありますが、大ヒット商品が出て、それを主力商品としてこれからどんどん売っていこう、この商品をバージョンアップさせてさらなるシェア拡大を狙おう、などという時には、どうしても設備投資などにお金がかかります。そのためには、銀行などからお金を借りて設備投資を積極的に行わなくてはなりません。ですので、成長期の会社が自己資本比率100%ということは、積極的な拡大路線を採っていない可能性がある、ということになります。もちろん、十分すぎるほど潤沢な資金を基に会社を立ち上げた結果、成長段階に入って積極的な投資を行ってもなお無借金経営が続いているという可能性もありますが、そのような会社は少数派ではないかと考えらえます。そうでない場合、その会社の今後の成長に期待して投資家は株式投資を行うわけですから、積極的な拡大路線を狙わない会社に投資したところで、株価は思うように上がっていかないのではないだろうか、という疑問が生じてしまい、どんなに財務状況が良くてもキャピタルゲインは狙いにくいのではないかと考えてしまいます。

「いや、投資は積極的にする。でも、銀行などから借りて負債を増やし、自己資本比率を下げるのは嫌なので、増資して自己資本を増やす形で資金調達するんだ」というケースもあるでしょう。確かに、銀行などからの借り入れには利息が付きます。また、借入金が負債になるため、財務的には見栄えがよくありません。そう考えると、増資をして株主から資金調達をした方が良いだろうと考えるのも理解できなくはありません。ですが、投資家に出資してもらったお金は、業績が良くなった時に配当という形で返さなければなりません。仮に500万出資して配当が2、3%程度のリターンであれば、「これなら、他の金融商品に投資した方がよかった」など、投資家から不満の声が上がるでしょう。しかも、今はどの銀行も低金利で融資してくれる時代です。そうなると、投資家に対するリターンよりも、銀行からの借入金に対する利息の方が安く済む可能性の方が高いのです。つまり、自己資本比率が高く、増資で投資家からの資金を集めた場合、資金調達コストは銀行より高くなっているかもしれない、ということになります。

このことから分かるように、自己資本比率が高いということは、確かに財務上はメリットです。ただ、会社のステージを考慮した場合に、果たしてどうなのか、という視点からも一考してみる必要があります。先ほど書いたように、成長段階にある会社の自己資本比率が100%である場合、果たして、これからの会社の成長につながるような投資をしているのか、という疑問が出てきます。投資家の立場で考えた場合、どうでしょうか?成長の機会が目の前にあるのに、それをみすみす逃して、会社の安全性を高めることだけに注力する…そんな会社の株価が、自分の希望するようなリターンを生むでしょうか?こういう視点から考えると、必ずしも無借金経営が良いとは言い切れないと考えられます。

会社の手元資金を知るためにネットキャッシュを確認しよう

また、自己資本比率が100%を目指したせいで現金不足に陥ることもあります。たまたま売上の良い時に普段以上にお金が入ってきて、そのお金で残りの借金を全額返済してしまったとします。すると、借金がなくなるため自己資本比率は100%です。翌月は普段よりも売り上げが悪く、資金繰りが苦しくなったとします。ですが、手元には現金がわずかしかなく、その結果、黒字倒産となってしまうという笑えない話もあるのです。このような状況に陥らないかどうかを確認するためには、その会社のキャッシュの状況を調べる必要があります。つまり、手元資金が十分にあるのか、ということをチェックしなければならない、ということです。ネットキャッシュは、現預金+短期有価証券-有利子負債という式で算出します。

手元資金が多い会社は不況に対する耐性が高い、ということになりますので、ネットキャッシュが多ければ多いほど、不況に強いということが言えます。また、ネットキャッシュが増えていっている会社は、借金を返済しているため有利子負債も減少していることが考えられます。有利子負債が減っているということは、つまり自己資本比率が上がる、ということです。もしもそうであれば、その会社は財務状況の良い安全性の高い会社であると言えるでしょう。

このように、自己資本比率100%は必ずしも良いわけではありません。また、自己資本比率のみを見ず、ネットキャッシュの部分についても必ず確認しましょう。自己資本比率100%であっても、ネットキャッシュが豊富であれば、黒字倒産の可能性は低くなります。また、配当の可能性が増えるため、投資家からの期待も高くなります。投資家からの期待が高まれば、その分株価も上がっていくでしょう。株のキャピタルゲインを中長期で得るためには、ただ自己資本比率が高く、財務状況が安全な会社を選ぶだけではなく、必ずネットキャッシュを確認しましょう。

まとめ

今回も決算短信の基本について解説しました。今回は自己資本比率についての話になりましたが、自己資本比率はただ高ければ良いというわけではない、ということを押さえておきましょう。その会社がどのステージにあるのか、また、そのステージを考慮した場合、適切な自己資本比率と言えるのか、ということを考え、適切な投資が行われているか、また、現金がどの程度あるのかを確認したうえで、総合的に考えるようにしましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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