株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~自己資本比率②~

株式投資の基本

自己資本比率をどう考えるか

前回、自己資本比率について考えてみました。今回も自己資本比率について考えてみましょう。

自己資本比率100%の無借金経営は、経営者が目指すところです。財務状況としては非常に良好で、投資家も安心して投資できる会社だという判断を下します。ですが、前回書いたとおり、会社のステージによっては、必ずしも自己資本比率100%が好ましいとはいえない場合もあります。特に気にしなければならないのは、手元資金がどれくらいあるのかということです。自己資本比率100%でも、手元にキャッシュがほとんどなければ、売上が悪化して入ってくるお金が少なくなった時に、支払うお金が足りない!ということになってしまう可能性が出てくるのです。こういうリスクが少ない会社かどうか、前回書いたとおり、ネットキャッシュの状態についても必ず確認する必要があります。

さて、前回は自己資本比率が極端に高い場合の話をしました。では、自己資本比率が低い場合はどうでしょうか?

実は、トヨタやソニーなど、日本を代表する名だたる企業の自己資本比率は決して高くありません。例えば、トヨタの2019年3月期連結決算を確認すると、自己資本比率は38.2%です。また、ソニーの2019年3月期連結決算時の自己資本比率は17.9%です。ちなみにこの2つについては、本業である製造業以外に金融事業も展開しています。金融事業が入ると自己資本比率が低くなる傾向があるため、トヨタもソニーも自己資本比率の低下の原因が金融事業にあると考えられます。なお、トヨタやソニーは金融セグメントを除いた貸借対照表や損益計算書を掲載していますので、そちらを参考にしてみると良いでしょう。

このように、大企業であっても自己資本比率は決して高いわけではありません。もちろん、上に挙げた2社は、自己資本比率の低い原因が金融事業にあるため、それ以外の事業だけを見ると、自己資本比率は40%台であったり50%台であったりと、決して低いわけではありません。このことから分かるように、自己資本比率が低いとは言っても、借金が多いからというわけではないケースもあるのです。先ほど挙げたような大企業の場合、複数事業展開していることからも分かるように、金融事業が原因で自己資本比率が低くなっているケースもあります。自己資本比率が低いと一口で言っても、どうしてそうなったのか、その原因をきちんと調べた方が良いとのです。調べた結果、金融機関などからの借金が多いからだということになれば、確かにネガティブな材料になります。ですが、その場合はその会社のステージを確認し、さらにはネットキャッシュの状態を確認しましょう。自己資本比率が10%を割り込むなどあまりに低い場合は問題ですが(この後解説しますが、業界的には10%を割り込んでも問題ない場合もあります)、そうでなければ、手元資金のある会社ということになりますので、いきなり倒産という事態に陥る可能性は少ないでしょう。

前回書いたとおり、成長段階に入った企業は積極的な投資により自己資本比率が低くなってもおかしくないのです。ですが、やはり自己資本比率が低すぎるとなると、「果たして大丈夫なのだろうか」と気になるのではないでしょうか。先ほど書いたトヨタやソニーのように、自己資本比率が低くて当たり前の金融事業を行っているのであればそれほど気にする必要はありませんが、そうでない場合はどうでしょうか。そんな時にまずチェックしたいのが、業界平均です。

自己資本比率は業界平均に対してどうなのか、ということもチェックする

ここまで何度も書いたとおり、銀行などの金融業は業界的に自己資本比率が低いのが一般的です。自己資本比率は自己資本÷(自己資本+他人資本)で計算しますが、例えば銀行であれば、顧客からのお金を預かっている以上、どうしても他人資本の割合が高くなります。証券会社の中にも銀行と同じように自己資本比率が10%を割り込む低い水準の会社があります。一般的に自己資本比率が10%を割り込むと危険な水準であると言われますが、金融業に関してはそうではありません。なぜなら、金融業の場合は、保有している資産の多くが現金化しやすいものだからです。

そんなわけで、仮に一般的に言われている安全な自己資本比率よりも、投資先候補となっている会社の自己資本比率が低くなっている場合、業界平均がどれくらいなのか調べてみましょう。もしも業界平均以上であれば、特に問題はないということになります。反対に、業界平均より低ければ、その会社への投資はいったん保留した方が良いかもしれません。特に中長期でその銘柄を保有することを考えているのであれば、自己資本比率が改善するまで待つか、自己資本比率が合格ライン以上の他の銘柄を探した方が良いでしょう。

というのも、筆者の知り合いで、自己資本比率の低さを無視して株を買った結果、痛い目にあった人がいるからです。

その人は株価チャートを見るのが好きなのですが、気になる動きをしている銘柄があったそうです。そこへの投資をしようと色々調べたところ、気になったのが自己資本比率だったそうで、自己資本比率が10%を割り込むレベルだったそうです。その会社はメーカーで金融業ではないため、自己資本比率が10%は純粋に会社に体力がないということになります。買うかどうか迷ったものの、気になる銘柄だからと買ってしまったそうです。

しばらくは順調に株価が上がっていったそうなのですが、ある日その銘柄が暴落し、ストップ安に。資金繰りが悪化し、最終的に上場廃止はもちろんですが、会社そのものがなくなってしまったそうです。当然大損してしまったのですが、やはり後悔したそうです。「自己資本比率が極めて低かったのに、それを無視してしまった。長期的に保有する気はなく、長くても2、3か月しか持つつもりのない銘柄だったから油断した」と後になって話していました。ちなみに、この会社が倒産したのは、取引先の手形が不渡りを起こしたことだったということをその人は言っていました。約束手形で代金を受け取ることの多い会社だったそうですが、不渡りが頻発したためか、約束手形で支払われた時点での売上はあっても、それを現金化できずにいたようです。もちろん、約束手形の不渡りだけが原因ではないのでしょうが、やはり自己資本比率が低すぎると、いざ何かあった時に持ちこたえられる体力がないということを理解した出来事だったとその人は言っていました。それ以降は、「自己資本比率については、最低でも45%以上ないといけない」という自分なりのルールを決めて銘柄選びをしているそうです。ちなみに、このようなケースは、営業キャッシュフローが何年も赤字になっていた可能性が考えられます。今となってはその会社の財務状況を調べることができないので何とも言えませんが、営業キャッシュフローが何年も赤字になっている、あるいは赤字額が大きすぎる場合は、要注意です。資金回収が滞り、黒字倒産一歩手前の状態になっていたり、粉飾決算をしていたりする可能性が考えられます。

銀行などの例外は除き、自己資本比率が低すぎる会社への投資は考えものですが、自己資本比率が基準となる50%未満…つまり、半分超が銀行などからの借金、残りが投資家などからの出資金という場合、資本効率を上げた経営ができるというメリットがあります。ソフトバンクがその代表例としてよく取り上げられますが、ソフトバンクは自己資本比率が2019年3月末時点で21.1%ということですので、出資金が1に対し銀行などからの借入金は4あることになります。しかし、借入金を積極的に事業に投下することで、積極的な事業拡大を実現し、株主に対し大きな利益を還元することができているのも事実です。つまり、株主にとっては、投下した資金をうまく運用してくれている良い会社ということになります。

このことから分かるように自己資本比率が50%未満と少なければ全部悪いというわけではありません。少ないなりのメリットもあるのです。とはいえ、あまりに自己資本比率が小さすぎる場合、事業環境が悪化した時に耐えきれないケースがあるので、どんな内容になっているのか、きちんと調べることが大切です。

まとめ

今回も自己資本比率についての話になりました。前回とは反対に自己資本比率が低い場合についての話をしましたが、自己資本比率が50%未満だった場合、業界平均がどうなっているのかをまずは確認してみましょう。もしかしたら、業界的に自己資本比率は低くなりがちなのかもしれません。

自己資本比率は低すぎるのは考え物です。ですが、今回説明したように、低いからといって必ずしも悪いわけではないこともある、ということを覚えておきましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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