株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~決算短信~

株式投資の基本

決算短信の見方の基本

前回、自己資本比率について解説しました。自己資本比率は会社の4ステージに応じて考える必要があり、あまりに高すぎる自己資本比率は良いとは言えないケースもある、ということを書きました。

今回は、決算短信のサマリーの後の添付資料として必ず掲載されている財務諸表の基本的な使い方を説明します。決算短信を見て、「おや?」と思ったら財務諸表を確認しましょう。例えば、自己資本比率が急激に減少していたら、何があったのか財務諸表で確認する…ということをします。このようにして数字をチェックし、自己資本比率の減少が要注意なのか、それとも一時的な悪化だから会社の今後の成長にはそれほど大きな影響を及ぼさないとみるのか判断します。

例えば気になる銘柄が出てきたので、決算短信をチェックしたとします。売上、営業利益、経常利益、純利益が増収増益となり、営業利益の伸びも前年度より大きくなっています。ここまでは業績モメンタムが良く、合格点の銘柄です。次に自己資本比率を確認したところ、50%以上になっていたとします。これも合格点です。

次にキャッシュフローの状況を見てみましょう。この会社は営業キャッシュフローがプラス、投資キャシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナスとなっています。この状態にあるということは、成熟段階にある企業ということになります。ですが、よく見ると、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローのマイナスが、前期よりも大幅に拡大しています。財務キャッシュフローのマイナスが増えたということは、配当額を増やしたり、銀行など金融機関への返済を増やしたりした、ということになります。営業キャッシュフローがマイナスの時に財務キャッシュフローのマイナスが前期よりも拡大していると要注意なのですが、この会社の場合、営業キャッシュフローはプラスです。ただ、気になるのは、前期よりも営業キャッシュフローが30億円ほど減っていることです。どうして減っているのかここできちんと確認します。

確認は財務諸表で行います。貸借対照表…いわゆるバランスシートで、どのような資産があるのかを確認します。

バランスシートの資産の部を見ると、その会社にはどんな財産があるのかが記載されています。会社が持っている財産には現金や土地や建物、商品など様々なものがありますが、その内容によって、大きく2つに分類されます。それは、流動資産と固定資産です。

流動資産は、現金はもちろん有価証券や商品、受取手形など、すぐに現金化しやすいものが該当します。基本的に1年以内に現金化するものが流動資産ということになります。一方、固定資産は土地や建物、機械など、1年以内の現金化を予定していないものが該当します。なお、こちらにも有価証券が含まれている会社もありますが、固定資産に含まれる有価証券は、例えば取引先などの株を持ち合っている相互保有株式など、1年以内の売却は考えておらず、長期間保有が前提の有価証券ということになります。

キャッシュフローをチェックしよう

先ほど、この会社の営業キャッシュフローは、前期に比べて30億円ほど減っていると書きましたが、ここでチェックしたいのが流動資産です。流動資産をチェックした時に、前期よりも受取手形や売掛金、あるいは棚卸資産が大幅に増えていれば要注意ということになります。

例えば、受取手形や売掛金が前期よりも大幅に増えているとします。これらは現金とは違い、支払いは後になるということです。ですが、売上には計上されます。そのため、「売上は立っているけれど、支払いはまだされていない」ということになるのです。もちろん、期日までにきちんと支払いがされれば問題はないのですが、取引先の資金繰り悪化などで、未回収になってしまうこともあります。あるいは、決算を良く見せようとして、後払いになる手形や売掛金での支払いで無理やり売上を立てている可能性も考えられます。売上の増加に応じて営業キャッシュフローも増えているのであれば、きちんと取引からのお金を回収でき、決算を良く見せようと前倒しで売上を立てたわけではないのだということが分かりますが、営業キャッシュフローが大幅に減っている場合は、上で挙げた可能性を考える必要があるのです。

また、棚卸資産が大幅に増えている場合にも注意が必要です。新製品の発売など明確な理由があって棚卸資産が増えているのであれば問題はありません。ですが、そうでないのに棚卸資産が増えているのであれば、思うように商品が売れず、苦戦している可能性が考えられます。その場合も営業キャッシュフローは減ってしまいます。商品が売れないために、営業活動で入ってくるお金が減ってしまうからです。

さて、先ほどの会社の場合は受取手形や売掛金が大幅に増加していることが分かったとします。バランスシートを確認したところ、前期よりも30%ほど受取手形と売掛金の金額が増えていることが分かりました。この会社は売上が前期比5%増、営業利益が前期比8%増と増収増益で、売上や営業利益や経常利益の伸びは前期を超えるものになっています。売上が伸びているのであれば、それに比例して受取手形や売掛金が増えてもおかしくありません。ですが、30%の増加はちょっと多すぎるのではないか、と考えられます。約30%も受取手形や売掛金が増えた理由はなんなのか、という疑問について、株主総会に出席して聞いてみたり、あるいは電話などで問い合わせることによって(このあたりは、企業によって対応が異なります)、真相がわかるかもしれませんが、決算短信だけを見ている段階では、推測することしかできません。とにかく、この決算短信から考えられる可能性としては、売上は見せかけのものかもしれないということです。つまり、なかなか売れない商品を、営業マンに無理やり売らせているか、あるいは、取引先の資金繰りが悪化しているために、思うように代金の回収が進んでいない可能性が考えられるのです。

いずれにせよ、どちらの可能性も決して良いものではなく、この会社に関しては、今後の動向に注意が必要であるといえます。そして、そこから考えられるのは、この会社は成熟企業ではあるが、今後の安定性に陰りが見えてきているということです。今期の決算は見かけ上は増収増益でも、内容を精査すると今後の業績見通しに疑問が残る部分があり、そう遠くない将来、減収減益になるのではないかということが予想されるのです。つまり、この決算書から判断できることとしては、現状、新規投資先として考えることはやめた方が良い、ということになります。今後、営業キャッシュフローが良化し、懸念事項となっていた受取手形や売掛金の増加が解消された時に増収増益基調が続いているようであれば、投資先として再び考えてみるのも良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?株式投資先の選定基準の一つに、「増収増益基調が続いているかどうか」というものがありますが、決算短信の内容をよく見てみると、増収増益が続いていても、内容に疑問が残るケースがあります。それを見つけるために、サマリー部分のキャッシュフローの項目は必ずチェックしたいところです。そして、必ず貸借対照表をチェックしましょう。今回説明したように、手形や売掛金が売上の伸び率以上に増加しているようであれば、売上の数字と実態にズレが生じている可能性があります。

初心者の場合、決算短信のサマリー部分とバランスシートの何をどう絡めてチェックすれば良いかわからない、というケースが多いかもしれません。今回紹介した内容が、チェックの際の参考になれば幸いです。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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