株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~営業キャッシュフローや投資キャッシュフロー~

株式投資の基本

キャッシュフロー計算書から不可解な点を感じ取ろう

個人投資家は機関投資家に比べて得られる情報量がどうしても限られます。機関投資家のように、実際に投資先企業に出向き、社長や担当役員といった人に話を聞いたうえで投資判断を下す、ということがなかなかできません。ですが、決算短信のサマリーと損益計算書、キャッシュフロー計算書を見比べることで、おかしな点に気づき、「この会社への投資はやめよう」という判断はできます。そのためにも、財務諸表の基本を押さえておくに越したことはないのです。

さて、前回、キャッシュフロー計算書について説明しました。キャッシュフロー計算書は現金の流れを金額で表したものです。そのため、損益計算書からは見えない部分が見えてくるケースがあります。簡単に言えば、粉飾決算を見破るのに利用できる、ということです。

例えば、すでに説明したとおり、商品在庫や売掛金、受取手形などは、バランスシートの資産の部の流動資産のところに計上されます。しかし、売掛金や受取手形については、実際に現金化されないとお金は入ってきません。つまり、後払いの状態になってしまっているため、売上には計上されていても、実際にお金が入ってくるのはもっと後、ということになります。

売掛金や受取手形を悪用し、粉飾決算をするケースもあります。例えば、増収増益となっている会社であっても、営業キャッシュフローが大幅なマイナスとなっているのであれば、「おかしいぞ」と思わなければいけません。もちろん、中にはそうなっても仕方ない、というケースもありますが(例えば、成長期の会社が高成長を続けている場合、売上の伸びに資金回収が追い付かないこともある)、そうでない場合は不可解です。そんな時にキャッシュフロー計算書を確認するのです。

もしここで売上債権が大幅に増加していて、貸借対照表でも、売上の何倍にもなる売掛金や受取手形が計上されているようであれば、おかしいと考えましょう。また、ここで確認したいのが、売上債権回転期間です。売上債権回転期間は、売上高を12か月で割った数字で売上債権を割ります。例えば、売上債権が100億円、売上高が600億円だとします。売上高を12か月で割ると、600÷12で50になります。そして、次に売上債権の100億円を50で割ります。こうして算出される数字は100÷5で2となり、売上債権回転期間は2か月ということになります。

一般的に売上債権回転期間は2、3か月程度になるのですが、これが10か月や20か月など、2、3か月から大幅に上回るようだと、おかしいということになり、売上を水増ししているのではないかと考えられるのです。

また、たな卸資産についても注意が必要です。たな卸資産がバランスシートで急増しているようであれば、必ず営業キャッシュフローを確認しましょう。営業キャッシュフローのたな卸資産が急増しているようであれば、要注意です。それと同時に有利子負債も急増しているのであれば、ますます注意が必要になります。なぜなら、借金をして商品をたくさん製造した結果、それが売れずに在庫が急増してしまった可能性があるからです。これが売れないと、会社の資金繰りが悪化する可能性がありますし、株価の下落要因にもなります。

さらに、たな卸資産については粉飾決算の手口としてよく使われます。期末の在庫を本来の数字より大きくすることで、売上原価を減らし、利益のかさ増しをするのです。そして、次の期に、前期に増やした在庫分を売上原価に計上して売上原価を上げ、粉飾決算を解消する…という方法をとります。それができなければ、粉飾決算は解消されず残ったまま続いていくことになります。

営業キャッシュフローや投資キャッシュフローの異変を察知しよう

以前も解説したように、現金ではなく手形や売掛金など「後払い」となるお金で支払われたものについても、バランスシート上は資産として計上されます。また、たな卸資産も、現金化はされていませんが、バランスシート上は資産として計上されます。そのため、これらの金額が急増した場合は、要注意です。

また、その会社のこれまでの営業キャッシュフローが、営業利益の何パーセントくらいになっていたのか調べてみることも大切です。だいたい営業利益の60%~80%程度で営業キャッシュフローが推移していたのに、突然200%くらいになったら「何かがおかしい」と思わないといけません。その理由を調べた方が良いでしょう。

次にチェックしたいのが、投資キャッシュフローです。投資キャッシュフローは初期段階、成長段階、成熟段階の会社でマイナスになるということを書きましたが、問題は、そのマイナスの額です。営業キャッシュフローが黒字の場合(つまり、成長段階と成熟段階の会社ですが)、営業キャッシュフローの黒字を投資キャッシュフローの赤字が上回る場合は要注意です。

投資キャッシュフローが赤字ということは、設備投資などにお金を使っていることになります。ですが、これまでにないくらい投資キャッシュフローの赤字が膨れ上がり、それが毎期続くようになると、おかしいと思う必要があります。もし、投資先候補の会社の投資キャッシュフローが大幅に増加したのを決算短信のサマリーで確認したならば、まずは貸借対照表を確認しましょう。例えば、土地や建物、機械などの設備投資にお金を使ったのだとすれば、有形固定資産が増えているのだろうかとか、あるいはソフトウェアなどにお金を使ったのだとすれば、無形固定資産が増えたのだろうか、といったことを確認します。また、投資有価証券を取得した場合もお金を使ったことになりますので、これが流動資産と固定資産のどちらに記載され、どれくらい増えているのかを確認する必要があります。

もし仮にソフトウェアが大きく増えていたら、注意が必要です。本来費用として計上しなければいけないソフトウェアの開発費用などを資産として計上する形で、利益を水増しする粉飾決算の事例があるのです。ソフトウェアの開発費用などを費用ではなく資産として計上し減価償却することにより、営業利益を本来の数字より大きく見せることができます。そのため、ソフトウェアが増えているようであれば、怪しいと思った方が良いでしょう。これを資産計上したということは、無形固定資産が増えているということになります。つまり、そのためにお金を使ったということになるため、投資額が増えて投資キャッシュフローの赤字幅が増えることになります。このような状態が連続した場合は、要注意です。増収増益になっていても、投資キャッシュフローの赤字が営業キャッシュフローの黒字を上回る状態が続けば、資金繰りに困り、いずれは立ちいかなくなる可能性があります。

このように、キャッシュフロー計算書からは、損益計算書からは見えない会社の台所事情を伺うことができます。先ほど書いたように、売上は急拡大していても、営業キャッシュフローが赤字続きあるいは赤字転落という場合は、要注意です。損益計算書を綺麗に取り繕っても、キャッシュフロー計算書ではそれを隠しきれないことが多いのです。このような不可解なお金の動きを見つけた場合には、その会社の株は買わない方が良いでしょう。

まとめ

今回もキャッシュフロー計算書について解説しました。損益計算書で売上や利益を良く見せても、キャッシュフロー計算書ではその歪みが隠し切れず、不可解な数字になってしまうことがよくあります。株式投資を行う際に、売上、営業利益、経常利益などといった項目を見るのはもちろん大切ですが、それだけでなく、必ずキャッシュフロー計算書を確認しましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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