株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~キャッシュフロー計算書~

株式投資の基本

キャッシュフロー計算書から見る、粉飾決算の事例

前回、キャッシュフロー計算書を見ることで、損益計算書では分からない会社の台所事情が見えてくる、ということを書きました。今回も、キャッシュフロー計算書を見ることで判明する会社の台所事情の事例を説明します。

これまで何度か書いたとおり、在庫分を不正に調整したり、受取手形や買掛金が急増しているようであれば、必ずキャッシュフロー計算書を確認しましょう。例えば売掛金が急増している場合、売上には計上されているものの、回収ができていないお金があるということになり、「売上を大きく見せたいのでは?」という可能性を考えましょう。営業キャッシュフローを確認した時に、売上債権のマイナスが大きくなっているのであれば、危険信号です。

このように、損益計算書上では優等生になっている会社であっても、実情は違う、ということがよくあります。その代表例としてよく挙げられるのが、東芝です。東芝は2015年に不正会計が発覚し、2008年3月期から2014年3月期までの間に約1,500億円もの利益を水増ししていたことが判明しました。会社の苦しい経営状況が明るみに出た結果、会社の事業部を切り売りするなどしてなんとか倒産を避けてきましたが、2017年にとうとう東証2部に降格しました。そんな東芝ですが、こちらについてもキャッシュフロー計算書を見ると、損益計算書からはわからない苦しい経営状況が見えてきます。

粉飾決算が発覚する前の東芝は、最終黒字の状態が続いていました。粉飾決算が行われた2008年3月期以降、2度当期純利益がマイナスになっていますが、それ以外は黒字になっています。一方、キャッシュフロー計算書を見ると、営業キャッシュフローの黒字よりも投資キャッシュフローの赤字が上回る状態が何度もありました。なお、以前説明したとおり、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計したものがフリーキャッシュフローですが、不正会計期間中の東芝のフリーキャッシュフローを合計すると、赤字になっています。最終黒字になっているはずなのに、フリーキャッシュフローが赤字だったということは、資金繰りがかなり苦しかったということです。

東芝の問題により、キャッシュフロー計算書の重要性が見直されました。損益計算書からは見えない実際のお金の流れが分かるため、損益計算書を取り繕って良く見せても、おかしな点が見えてくるのです。

さて、そんな東芝ですが、先ほど書いたとおり、東証2部に降格しています。その原因は、同社が87%もの株式を保有していた米原発メーカーのウェスチングハウスに関し、巨額損失を計上し、債務超過になったことです。ですが、同社はウェスチングハウスが減損損失を計上した2012年度と2013年度に減損損失を計上していませんでした。というのも、同社は米国の会計基準を採用していたからです。

東芝はウェスチングハウスの買収を行った際、本来の価格を大幅に上回る金額で買収しています。その額はおよそ6,000億円です。このウェスチングハウスの買収には、当時他の日本企業も興味を持っていましたが、約6,000億円という金額は当時としても破格の値段で、実際には2,000億円~3,000億円程度が妥当な買収額だっただろうと言われています。

実際の金額よりも高い金額で同社を買収した東芝は、差額分をのれんとして計上しました。この後、ウェスチングハウスの事業が好調になり利益が上がれば良かったのですが、減損損失を出していることからも判るとおり、どうもうまくいかなかったようです。

以前も書いたとおり、のれんに関しては20年かけて償却するというルールがあります。しかし、東芝はのれんの償却を行ってきていなかったのです。どうして行ってこなかったのかということについては、すでに書いたとおり、東芝がグローバル企業であるため米国の会計基準を採用していたことが原因です。同社が日本の会計基準を採用していれば、20年間に渡り、毎期150億円~200億円ほどの償却を行う必要がありました。その場合、のれん償却によって、営業利益が大幅に目減りしたものと考えられます。

なお、東芝は2016年3月期にウェスチングハウスなどの資産価値を再計算し、減損処理を行いました。その額は7,125億円と膨大なものになり、株主資本が1,912億円もマイナスとなる債務超過に陥りました。これにより、同社が東証一部から東証二部に降格したことはすでに書いたとおりです。

のれんは不正に使われやすい

このように、のれんは不正に使われやすい傾向があります。東芝だけでなく、例えばオリンパスものれんを利用して不正を行っています。

オリンパスは2006年から2008年にかけて、本業とは関連性の薄い、資源リサイクルや化粧品・健康食品などの会社を高額で買収しました。この買収によるのれんを計上した後、2009年3月期になってのれん代を減損処理しています。

オリンパスがこのような不可解な買収と減損処理を行った原因は、バブル崩壊によって生じた多額の損失を隠蔽するためだったようです。同社はバブル期に金融商品に投資したようですが、バブル崩壊により資産価値が下がり含み損が生じたため、それを損失飛ばし(含み損のある株などの投資商品を外部に売却したように見せて、会計の損失計上を免れること)という方法で隠し、簿外に損失を移動させることで隠蔽していたのです。このことが明るみに出ないよう、オリンパスは不自然な企業買収と減損損失の計上を行ったのでした。

なお、オリンパスに関しても東芝同様、キャッシュフロー計算書が不自然な状態なっています。同社のキャッシュフロー計算書を確認すると、2008年3月期に投資キャッシュフローが大幅なマイナスになっています。しかもそのマイナスは、同社のこれまでの投資キャッシュフローを考慮しても、過去にないほどの大幅なものとなっており、その時点で不可解であると言えるでしょう。ここまで大規模な投資をしたにも関わらず、同社の営業キャッシュフローはその後伸びるどころか下落しています。

東芝とオリンパスの事例から、損益計算書で実態ごまかせても、キャッシュフロー計算書の方ではそれができず、不可解な内容になっていることが分かります。キャッシュフロー計算書は現金の流れを数字で表したものであるため、損益計算書に比べてごまかしがきかないのです。そのため、その会社の実情を知る上では欠かせないものであると言えます。

今回紹介したのれんは、収益に貢献していないと見なされれば、損失になります。それは日本の会計基準はもちろん、国際会計基準でも米国会計基準でも同じです。収益に対する評価が低いものになれば、これが原因で大きな損失が計上されることになりかねません。東芝やオリンパスは実際に問題が明るみに出ましたが、日本の上場企業の中には、巨額ののれんを計上している会社が多数あります。もちろん、巨額ののれんを計上することが悪いことではありませんが、東芝やオリンパスのような状態になっていないかには注意が必要です。巨額ののれんを計上している会社については、株主資本に対するのれんの割合が高い場合に特に注意したいところです。

まとめ

今回はのれんを利用した不正会計とキャッシュフロー計算書との関係について説明しました。損益計算書がどんなに良い内容にごまかしてあっても、キャッシュフロー計算書の方ではごまかしがききません。買収などでのれんを計上したなどといったニュースが出た場合は、その後のキャッシュフロー計算書の動きをきちんと確認しましょう。東芝やオリンパスは、不正が発覚した後、株価が大暴落しています。同社の株を保有していた投資家にとっては大打撃です。そうならないためにも、キャッシュフロー計算書をしっかりチェックする癖をつけましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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