株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~減価償却費~

株式投資の基本

減価償却費について

前回は、バランスシートと損益計算書の基本と見方について解説しました。今回はこれら2つの補足事項について解説します。

今回解説する内容は、減価償却費とのれんです。のれんについては、以前に簡単に説明したかもしれません。しかし、今回はもう少し詳しく説明をします。

まずは減価償却費です。会社の規模を問わず、経理を担当したことのある人にとってはおなじみの勘定科目ではないでしょうか。例えば、会社でパソコンを買った時には、金額にもよりますが、買った金額をそのまま経費として計上するのではなく、減価償却費として買った金額を分割して複数年にわたり計上することがあります(10万円未満のパソコンは、消耗品費として一気に費用として計上します)。例えば、10万円以上20万円未満のパソコンの場合は3年で減価償却します。これが30万円以上のパソコンになると、サーバー用パソコン、サーバー用ではないパソコンのそれぞれで法定耐用年数が定められる形になります。30万円以上となると「ずいぶん高額だな」と思う人もいるかもしれません。スタッフが2、3人しかいないごく小規模の会社の場合はあまりないかもしれませんが、ある程度の規模の会社になると、複数の社員のパソコンをまとめて買うこともあります。そうなると、パソコンの購入代金が30万円以上になるのもよくある話なのではないでしょうか。

さて、先ほど出てきた法定耐用年数ですが、これが減価償却をする際の償却期間です。法定耐用年数に関しては、国税庁のHPで確認することができます。なお、先ほどのパソコンについてですが、サーバー用パソコンが5年、そうでないパソコンが4年というように償却期間が定められています。また、事務机、冷蔵庫、カーテンなど様々なものの法定耐用年数が国税庁のHPに掲載されていますので、興味がある人はチェックしてみて下さい。ここで記載された耐用年数…つまり償却期間に基づいて減価償却を行っていきます。

減価償却というとちょっとイメージがつきにくいかもしれませんが、考え方としては難しいものではありません。先ほど挙げたパソコンもそうですが、事務机や冷蔵庫などは、使っていくうちに劣化していきます。劣化した分、当然のことながら価値は下がっていくわけです。そこで、価値が下がった分を減価償却費として計上します。

「でも、わざわざ耐用年数で割って、償却期間中にちょこちょこ計上する必要ってある?買ったらその時にまとめて計上して何が悪いの?」と思う人もいるかもしれません。確かに、そうかもしれません。ですが、例えば製造業の場合、商品を生産するための機械を買ったらそれで終わりではありません。長期に渡りその機械を使用して商品を生産し、それが売れることで売上が立つということになります。つまり、その機械は買った時のみならず、それから先の何年間か会社の売上のために役立っているということになります。そのため、機械などの固定資産については、法定耐用年数に基づいて少しずつ使用されたとみなされ、取得原価は償却期間中に少しずつ経費として計上される形になるのです。

このように、パソコンや機械などの固定資産については、買った時のみならず、法定耐用年数に基づいた期間、経費として計上されます。そして、損益計算書上で差し引かれていきます。それにあたり、「どこで差し引かれるのか」という疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。

減価償却費については、売上原価または販売費および一般管理費のどちらかに計上されています。例えば、服を作る会社が製造のためにミシンなどの機械を買った場合、その機械は売上原価に計上されます。売上原価に計上される減価償却費は、商品の製造や仕入れにかかる固定資産ということになるのです。一方、服を販売する会社が販売のために大型店舗を作ったとします。その場合減価償却費は販売費および一般管理費に計上されます。

このように減価償却費は売上原価または販売費および一般管理費に計上されますが、注意したいのは、実際に経費としてお金が出ていったわけではないということです。例えばパソコンであれば、実際に購入した期に代金を支払っているため、お金が出ていっています。ですが、それより後の期に関しては、実際にはお金は出ていっていません。ですので、減価償却費は、実際に支払いをした期以降にも損益計算書に経費として計上されているということに注意しましょう。

のれんについて

次にのれんについて解説します。先ほどの減価償却より、のれんの方がピンとこない人が多いかもしれません。というのも、のれんは企業買収時に発生するからです。大企業で経理に携わっていた、あるいはM&Aなどで企業買収をしたことがある会社で経理をやっていた、という人でないと、あまりお目にかかることのない勘定科目ではないかと思います。

のれんとは、企業買収した際に、買収先の会社のブランド力を金額で表したものになります。企業買収の際に必要となる金額は、その会社の純資産にこのブランド力を加えたものです。ブランド力というと曖昧に聞こえるかもしれませんが、例えばその会社のノウハウや技術力、長年にわたって培った品質などへの信頼度等がブランド力であると言えるでしょう。つまり目には見えない価値に対し金額を算出し、純資産にプラスして買収するわけです。ですので、例えば純資産が30億円の会社を買収する際に、50億円で買収したとすれば、50億から30億を引いた20億円が買収先の会社ののれんということになります。とはいえ、この50億円のうち、実際に目に見える資産として手に入るのはあくまでも純資産の部分です。このままでは20億円をなぜか余分に支払ったことになってしまうため、ここでのれんが登場するわけです。

先ほども書いたとおり、のれんは目に見えない資産です。それに対し、買収元の会社はコストとして支払っています。ですが、のれんも減価償却費同様、買った時に一気に計上するわけではありません。なぜなら、これも減価償却費の考え方と同じで、買った時のみならず、今後もそのブランド力が会社の売上などの業績に貢献するとみなされるからです。そのため、買収時は買収先の会社の純資産と一緒に買収元の会社のバランスシートの資産の部にいったん計上します。そして、その後20年かけて0にしていくのです。そのため、のれんは20年にわたり、損益計算書の方で販売費および一般管理費に計上されます。

なお、のれんには、負ののれんというものもあります。これは、上で挙げたのれんの例とは反対に、買収先企業の純資産額未満の金額で買収した場合に発生します。例えば、買収先企業の純資産額が50億円なのに対し、買収額は20億円だったとします。すると、50億円から20億円を引いた残りの30億円が負ののれんということになります。負ののれんが発生する原因として考えられるのは、例えば赤字経営になっている場合や、何らかの訴訟リスクが発生する可能性がある場合、また、未払い賞与や退職金、金融派生商品の含み損など、将来発生する支払いがある場合です。将来発生する支払いを考慮して純資産をディスカウントしていった結果、負ののれんになってしまいます。

負ののれんについては、のれんとは反対に利益として計上されることになります。正確には特別利益です。のれんの場合は20年かけて目に見えない資産を経費として計上し、資産の部ののれんを0にしていきますが、負ののれんの場合は、買収した期の特別利益に一気に計上してしまいます。そのため、年数をかけて利益を計上していくものではないということに注意が必要です。

なお、のれんについても減価償却費同様、実際にお金が出ていったり入ってきたりするわけではありません。

まとめ

今回は減価償却費とのれんについて説明しました。会計処理の方法はそれぞれ違いますが、ポイントは、実際にはお金のやり取りがないということです。減価償却費については、実際に支払いをした時にはお金が出ていっていますが、それ以降は費用として計上されても本当にお金が出ていったわけではないのです。これについては、キャッシュフロー計算書で確認する必要があります。次回は、そのことについて説明します。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

おススメの証券会社

株式投資の基本
投資塾~今から始める株のお話~
タイトルとURLをコピーしました