株式投資で必ずチェックしたい決算短信の見方~流動資産と流動負債~

株式投資の基本

流動資産と流動負債から確認する資金繰り

前回、前々回とキャッシュフロー計算書の数字から不可解な部分を洗い出し、チェックすることの大切さを説明しました。損益計算書上は問題がなくても、現金の流れを確認すると不可解なことがある…そんな会社もあります。前回紹介した東芝やオリンパスのように、粉飾決算が発覚してしまうケースもあるかもしれません。会社に対する信頼度が急低下し、株価が下落するだけでなく、倒産に追い込まれる可能性もあるのです。そんな可能性のある会社に投資しないよう、きちんと会社の資金繰りの状態をチェックすることが大切です。

さて、キャッシュフロー計算書をチェックする以外にも、おおよその資金繰りを把握できる方法があります。それは、流動資産と流動負債です。この2つは、以前も説明したとおり、1年以内に現金化される予定で、「仕入→生産→販売→現金の回収」という営業サイクルの中にある資産と負債ということになります。流動資産は1年以内に現金化できるお金、流動負債は1年以内に現金で支払わないといけないお金ということになり、流動資産の方が流動負債よりも大きければ、その会社の資金繰りは問題ないということになります。

さらに、営業キャッシュフローもチェックしましょう。営業キャッシュフローは流動資産よりも短期で、イメージとしては日銭に近いものになります。営業キャッシュフローがプラスであれば、その会社は日銭を確保できている、ということになり、こちらの方も流動負債の支払いに使えます。その場合、流動資産はもちろん営業キャッシュフローも流動負債の支払いに使えるということになるため、流動資産と営業キャッシュフローを合計した額が流動資産より多いようであれば、資金繰りに困ることはないと考えられます。

キャッシュフロー計算書のところでも書いたとり、その会社の資金繰りが問題ないかどうかは、投資先を決める上で重要なチェックポイントです。前回はどんなに業績が良くても、バランスシートやキャッシュフロー計算書に「おかしいぞ」と思う点があれば会社への投資は避けるべきということを書きましたが、今回は、業績が悪くても、投資先対象として合格ラインに乗るケースについて解説します。

流動資産と流動負債の比較の例

例えば、将来大きなシェア獲得を狙えるものの、現状業績不振に陥っている会社や、景気の変動に左右されやすく、景気悪化で業績不振に陥っている会社があったとします。業績が低迷しているため、決算短信を確認すると、減収減益が続いています。これだけを見ると投資先企業としては不安です。いつどこで業績が好転するか分からず、それまでこの会社の体力が持つかどうかという疑問もあります。そんな時に確認するのが、先ほどの流動資産と営業キャッシュフロー、流動負債の比較です。

例えば、流動負債が2,900億円あったとします。そこで流動資産がどれくらいあるかを確認すると、流動資産は3,500億円あります。これだけで、当面の資金繰りは大丈夫と言えますが、内訳を確認してみましょう。内訳をチェックしたところ、現金および預金は2,400億円ほどあり、受取手形と売掛金は合わせて600億円ほどあるとします。ただ、貸倒引当金も同社は計上していて、その額は50億円です。その分を受取手形と売掛金の合計である600億円から差し引くと、550億円になります。

現金が2,400億円もあるのは安心材料です。受取手形や売掛金については全額回収できるかどうか、という問題はありますが、同社の商品の顧客は大部分が大手上場企業や中堅でも経営状態の良い会社です。そのため、これらが回収できない可能性は低く、仮にそうなっても、ごく一部ではないかということが考えられます。そのため、とりあえず、現金と受取手形、売掛金だけで2,950億円ある、ということが分かりました。

この例では、流動負債を全額すぐに返済しなければならない前提で説明しましたが、実際には流動負債を全額すぐに返済しなくてはならない、というわけではありません。例えば銀行が借り換えに応じてくれたりするだけでも、状況は変わってきます。そのため、実際にはもう少し資金繰りに余裕があると考えられます。また、この例では、流動資産の中の現金や受取手形・売掛金の金額をチェックしていますが、製造業の場合は、流動資産の中に製品や原材料なども入ってきます。その場ですぐに現金化できるものではないかもしれませんが、短期間での現金化が可能ものだと考えられます。

ただ、製品や原材料に関してはバランスシートに記載されている金額から下落するケースも考えられます。例えば劣化しやすいものや市況に価格が影響されやすいものは、現金化するタイミングによっては、バランスシート上の金額より小さくなってしまうかもしれないのです。そのため、製品が現金化できた時の金額に関しては、バランスシートに記載されている金額よりも少なく見積もった方が良いでしょう。

流動資産が流動負債の額を下回った時に営業キャッシュフローをチェックする
さて、上の例では、流動資産と流動負債で資金繰りをチェックし、会社の体力が当面持つかどうか判断しましたが、この2つだけで済んだのは、流動資産の額が流動負債の額を上回っていたためです。もしも流動負債が流動資産の額を上回っていたら、どうなるでしょうか。

例えば、ある会社があります。これから伸びると考えられているものの、現状、自己資本比率は27%と、30%を割り込む水準になっています。以前説明した自己資本比率の基準である50%を大幅に下回っているのは懸念材料です。そんな時に知りたいのは、当面の資金繰りです。自己資本比率が基準よりも低いものの大丈夫なのかどうか、ということを、流動資産と流動負債から判断するのです。

この会社の流動資産が150億円、流動負債が170億円だとすると、流動負債が20億円多いということになります。ここで、先ほど触れた営業キャッシュフローが登場します。この会社の営業キャッシュフローは、90億円です。つまり、この会社は90億円もの日銭が入ってくるということになります。この時点で流動資産と営業キャッシュフローを合計した額が流動負債を上回っているので、安心といえば安心なのですが、やはり知りたいのは現金の額ですので流動資産の内訳を確認しましょう。確認したところ、この会社の現金および預金は80億円あることが分かりました。現金と営業キャッシュフローだけで流動負債の170億円を返済できるため、自己資本比率は基準となる50%より低いものの、ひとまず安心であると考えられます。

このように、自己資本比率が基準となる50%より低かったとしても、流動負債を返せるだけの現金と営業キャッシュフローがあれば、とりあえずは大丈夫であると言えます。なお、成長段階の会社の場合、事業拡大のために積極的な投資を行っているケースが多いため、営業キャッシュフローがプラスでも、投資キャッシュフローが赤字になっていることもあります。この額が営業キャッシュフローを上回っているとフリーキャッシュフローがマイナスということになってしまい懸念事項と言えますが、もしもそれが順当なものであれば、問題ないといえます。ただ、問題はその後です。そこまでして投資した事業が黒字にならず、営業キャッシュフローが赤字転落するようであれば、今後の投資方針を考えた方が良いかもしれません。

まとめ

今回は、流動資産と流動負債からその会社の資金繰りをチェックする方法について説明しました。前回説明したキャッシュフロー計算書を見てチェックする方法と併用して利用してみると良いでしょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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