IPO投資の注意点

IPO投資

ソフトバンクの事例から考えるIPO投資の注意点

ここまでIPOの基本について解説してきました。数ある株式投資の中でもIPO投資は高い人気を誇ります。なぜならば、公募価格よりも初値が値上がりする可能性が高いからです。しかし実際には、買ったは良いものの上がらずに公募価格割れとなってしまうケースもあります。なぜそのようなことが起きてしまうのでしょうか。そもそも、IPO投資で上がる可能性が高いのはどうしてでしょうか。

「IPO投資で株価が上がる可能性が高いのはなぜ?」という疑問について、どのような回答を思い浮かべるでしょうか。事業の将来性が高いから?創業から今に至るまでの実績が右肩上がりだから?色々な理由が考えられます。ですが、実際のところは需給関係で決まることが多いのです。

人気がある銘柄は公開価格から上がる可能性が高まります。とはいえ人気がある銘柄は、必ずしも知名度が高い銘柄というわけではありません。例えば、吸収金額(資金調達額)の大きすぎる銘柄は下がりやすい傾向にあります。その例として前回も解説したソフトバンクがあります。ソフトバンクは2018年12月19日に上場し、その資金調達額が近年の大型IPOの中でも群を抜いているとして注目を集めていました。大型上場として話題になった日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険がそれぞれ約6,930億円、約5980億円、約1,450億円、そして、JR九州が約4,160億円だったのに対し、ソフトバンクは約2兆6,000億円とこれらを大幅に上回るものでした。

また、ソフトバンクは知名度も申し分なく、同社株の年間配当利回りは5%と魅力的でした。しかし、東証一部上場企業に新規上場した会社に関して言えば、吸収金額(資金調達額)が250億円以下の場合は公募価格割れしにくい傾向にあるものの、ソフトバンクの場合は吸収金額がすでに書いたとおり2兆6,000億円と、目安となる250億円を大幅に上回っていたため、この時点で公募割れする可能性が高かったのです。

また、同社の配当性向に関しては元々懐疑的な意見があったことも問題でした。先ほど書いたとおり、ソフトバンクの年間配当利回り5%は魅力的で、多くの個人投資家が高い配当利回りを期待して同社のIPOに申し込みました。しかし、機関投資家の間では、同社の配当性向(配当の支払い総額÷当期純利益×100)が85%と高すぎることを懸念する見方が根強くあったのです。

配当性向は成長企業になればなるほど利益を投資に回してしまうため、低くなります。ソフトバンクは東証一部に上場したため、成長企業ではなく成熟企業という見方が一般的にされますので、高配当をうたうことは特段おかしなことではありません。しかし、この時すでに競合他社であるNTTドコモやauは料金値下げに動き出しており、ソフトバンクもいずれこの動きに追随せざるを得ないだろうとの見方がされていました。仮にそうなった場合、同社は減益となる可能性が高まり、85%という高い配当性向を維持できないだろうと考えられたのです。

また、ソフトバンクグループで見た場合、同グループはソフトバンクからの配当を当てにして自社の株主への配当を行っていました。そのような事情もあって、ソフトバンクは85%という高い配当性向を設定せざるを得ないのではないかとの見方もありました。仮に通話料金等を値下げして売上が減った結果、ソフトバンクの配当性向は実現できないどころか、ソフトバンクグループ全体の業績を揺るがしかねないとの不安もあったのです。それに加え、米中貿易摩擦による株式市場の地合いの悪化など他の要因もあり、ソフトバンク株は公募価格割れとなったのでした。

ソフトバンクの初値が公募価格を下回ってしまったのは、前回解説した以外にも上記のような要因が複数重なったことが原因ですが、吸収金額(資金調達額)が市場規模に対して大きすぎると、公募価格割れとなる可能性が高い、ということを覚えておきましょう。

また、IPOに関しては、公募株と売出株のどちらなのか、ということにも注意が必要です。公募株は企業が新規事業等で資金が必要になり、市場から資金を調達するために株式を新たに発行することを言います。一方、売出株は、その会社の株を元々保有していた株主が株を市場に放出し、売却式を得ることを言います。

公募株に関しては、株式を発行することで、それを買った株主からのお金が会社に入り、それを基に会社は新規事業等を行うことができますので、会社にとってはメリットです。一方、売り出し株は会社にお金が入ってくるわけではなく、株を売った既存株主に売却益が入ることになります。そのため、会社にとってはそれまでの株主が別の株主に変わる、というだけになり(もちろん、「だけ」ということはありません。例えば、敵対的買収を繰り返しているファンド会社などが新たな株主になれば、会社にとっては不安要素となり問題であると言えます)ますので、公募に比べると大きなメリットがあるようには思えません。

また、売出の場合、株を売り出す既存株主が利益確定売りを行うため、株価は下がりやすくなり、結果的に公募価格を割り込むケースが多いのです。そのため、IPOが公募と売出のどちらなのか、ということはきちんと確認しなければなりません。ちなみに、先ほどのソフトバンクのIPOに関していえば、売出が100%でした。売出が100%のIPOに市場は高評価を下しません。そのため、公募と売出のどちらなのか、ということにも注意が必要です。

長期保有を目的とするIPO投資は何に注目すべきか

IPO投資を行う人の多くが、初値が公募価格を上回ることを期待して投資します。そのため、上場したらすぐに手放すことを考えるケースが多いのではないかと思いますが、中には、長期的な成長によるキャピタルゲインや配当、株主優待などに期待し、長く保有したいと考えている人もいるのではないでしょうか。そのような人がIPOを行う場合には何をチェックしたら良いでしょうか。

そのような場合、必ずしもIPOでその銘柄を手に入れずとも、初値が付いた後の利益確定売りによって値下がったタイミングで手に入れるのも一つの方法ではないかと思います。いわゆるIPOのセカンダリー投資です。もちろん、IPO株が上場後に思ったほど値下がらず、「やはりIPOで手に入れた方が安く済んだ」となるケースもありますので、仮に長期保有目的であったとしても、IPOに申し込んでおくことは決して悪いことではありません。

長期保有で持つ場合は、必ずしも人気化しやすい事業を展開している会社を選ぶ必要はなく、例えば、食品などIPOでは不人気で公募価格割れしそうでも、そのセクター自体はディフェンシブという業種を選ぶのも良いのではないでしょうか。食品関係は、IT関連とは違い、大きな成長は狙えないかもしれませんが、好不況に左右されにくく、業績が比較的安定しているのが最大のメリットです。このような業種のIPOに申し込んでみるのも良いかもしれません。公募価格割れとなった場合、資金に余裕があれば、値下がったところで買い増しをしても良いでしょう。

また、例えば運送など、IPOでは不人気な部類に分類される業種であっても、過去の業績を見てみると、順調に増収増益を続けてきており、財務状況もしっかりしていて資金繰りも安定している会社であれば、長期保有には良いと考えられます。

このように、IPO銘柄を長期保有目的で買う場合は、初値の値上がりを期待する銘柄とは異なる基準で銘柄を選ぶ必要があります。この場合、通常の株の取引と同じような基準で銘柄を選ぶと良いでしょう。

なお、長期保有の場合に気を付けたいのが、ロックアップです。既存の株主が上場後にすぐに株の売却ができないよう、通常何らかの規制がかけられているのですが、その内容をしっかり確認しておきましょう。ロックアップ期間や、株価によるロックアップ解除条件が通常定められていますので、そのタイミングでの値下がりを覚悟しておかなければなりません。もしロックアップ期間を過ぎたり、株価がロックアップ解除条件に該当したために売却され下落した場合は、そのタイミングで買い増しをしておくと良いでしょう。そう考えると、資金量次第ではありますが、長期保有目的のIPO投資は、最初は少なめに株を買っておいた方が良いかもしれません。

まとめ

今回は、IPO投資と長期保有目的のIPO投資に関して説明しました。次回もIPO投資のポイントについて解説します。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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