IPO投資では、実際に上場した会社の目論見書をチェックする事が大切

IPO投資

最近上場した会社の目論見書を基に、ポジティブ材料とネガティブ材料をチェック

前回は、Link-Uの目論見書を基に、ポジティブな点やネガティブな点を確認しましたが、今回も実際の目論見書を基に、ポジティブな点、ネガティブな点を確認してみます。今回は、6月に新規上場したあさくまという会社です。あさくまは6月27日にジャスダックに上場を果たした会社で、レストラン「ステーキのあさくま」を店舗展開しています。また、ステーキ以外に、ビュッフェレストランの「ファーマーズガーデン」、もつ焼き居酒屋の「エビス参」など、様々な業態の飲食店を経営しているようで、グループ全体では現時点で合計87店舗を展開しています。

なお、あさくまに関しては飲食店ということもあって、株主優待の実施が予定されているようです。確定してはいませんが、予定としては100株で4,000円相当の株主招待食事券(1枚あたり1,000円)の配布をするとのことです。実は飲食店の新規上場に関しては、食事券の株主優待を期待して買う投資家も多く、根強い人気があります。

さて、そんなあさくまですが、売上は増収基調で右肩上がりです。経常利益に関しては、前期が減益となってしまっていることが懸念事項ですが、それまで順調に増益を続けてきていました。なお、今期についても原材料の値上げや販促による商品の値引きの影響を受け、原価率が上昇したことに加え、人件費が増加していることなどを考慮すると、前年比割れか横ばいになる可能性があるかもしれませんが、おおむね堅調であると考えられるでしょう。ちなみに、同社は4Qに売上が集中する傾向があるとのことです。

なお、会社の自己資本比率は、今3Q時点で71.0%と安心できる水準にあります。さらに、前期、前々期ともフリーキャッシュフローがプラス、流動負債よりも流動資産の方が多く、かつ、現金及び預金が流動負債よりも多いことから、財務状況や資金繰りも安定していることが分かり、この点も好材料と考えられます。

ちなみに、IPOの資金を何に使うかということについて、同社は会社計画に基づき直営店の新規出店しようと考えており、それにかかる設備投資金や運転資金として使いたいとのことです。

さて、あさくまのIPOでは、公募と売出のどちらも行いました。公募に関しては、50万株、売出9万2,100株ということで、売出株式比率は15.6%と公募の方の比率が高いことがポジティブ要素です。なお、オーバーアロットメントによる売出は8万5,000株となっています。

次に想定価格ですが、こちらは1,150円でした。そして仮条件価格は1,150円~1,250円となっています。想定価格から算出される吸収金額は、1,150円×(500,000+92,100+85,000)≒7.78億円です。ジャスダックの吸収金額の目安は20億円前後ですので、この想定価格から算出される吸収金額は目安の金額以内に収まっており問題ない、ということが判断できます。また、あさくまの公募価格は1,250円となりました。この公募価格は、先ほど書いた仮条件の上限ぴったりの金額で、仮条件の上限を下回りませんでした。これもポジティブ要因であると考えられます。

なお、同社の株主の状況を確認すると、ベンチャーキャピタルの保有株はなく、同社の親会社であるテンポスホールディングスの保有割合は約55%を占めています。その次が有限会社あさしおという会社で、こちらの保有割合は11%です。以下は会社や個人が大株主に名を連ねています。なお、親会社であるテンポスホールディングスも上場していることから、あさくまの上場は親子上場になります。そのため、すでに紹介したソフトバンクの上場を彷彿とさせますが、ソフトバンクの場合はすべて売出株だったのに対し、あさくまに関して言えば、売出は有限会社あさしおという会社になります。ちなみに、有限会社あさしおは、あさくまと資本提携している株式会社テンポスバスターズの創業者である森下氏が社長を務める会社で、同氏の資産管理会社です。今回のあさくまの上場は、公募株の方が売出株より多く、売出株も有限会社あさしお保有分のものとなりますので、ソフトバンクのような、子会社からの資金吸収も目的の一つに数えられる上場とは異なると考えられます。なお、あさくまの大株主のロックアップ期間は180日となっていて、「株価が公募価格の〇倍になればロックアップが解除される」といった条件は設定されていません。

このことから考えられるのは、

〇あさくまは、ITや自動運転、AIといった人気のテーマに沿った業種の会社ではない(飲食業)ものの、年1回4000円分の食事券がもらえる株主優待が魅力でポジティブ。

〇業績については、前期が減益、今期も減益と考えられるが、今期については上場費用が嵩んだことも影響していると思われる。また、食材価格の高止まりや人手不足による人件費の上昇、競合他社との競争激化、さらには2018年10月から行った人気メニューの割引も減益の原因となったものと考えられる。ちなみに、原価率に関しては、2017年3月期の40.7%から2018年3月期は40.9%に微増し、販管費率は2017年3月期の49.8%から2018年3月期の50.2%に上昇している。さらに経常減益に関しては、協賛金収入やその他収入が減少したことが原因となったようである。営業減益はネガティブだが、同社の財務状況や資金繰りは良好であるためポジティブ。

〇公募と売出と両方あるが、公募の方が圧倒的に多いためポジティブ。値下がりしづらいと考えられる。

〇公募価格が仮条件の上限を下回っていないことはポジティブ。

〇吸収金額についてもジャスダックの目安となる20億円を下回っておりポジティブ。

〇大株主の保有する株に関しては、ロックアップ期間が180日間設けられている。ただ、株価に関するロックアップ解除条件は定められていない。そのため、長期保有の場合はロックアップ期間を過ぎた後に要注意である。

ということになります。

このように、あさくまに関しては、ネガティブ材料もあるもののポジティブ材料の方が多く、初値が公募価格を上回る可能性が高いと考えられます。

あさくまは実際にどうなったのか

ここまで、あさくまのIPOに関しどのような内容になっているのかということと、ポジティブな点とネガティブな点をそれぞれ挙げました。あさくまに関しては、最初の方で述べたとおり、6月27日に上場を果たしています。この時、どのようになったのかというと、午前10時26分に公募価格の1,250円を46.7%上回る1,834円の初値を付けました。初値が公募価格を大幅に上回ったことで利益確定売りが入ったのでしょう。この日の終値は1,630円となっています。それでも公募価格の380円高となっていますので、仮に同社株を1,000株持っていて終値の1,630円で売却できていれば、38万円の利益が出たことになりますし、初値で運良く売ることができていれば、1,000株で58万4,000円の利益を出すことができた、ということになります。

このあさくまのIPOの例からも判るとおり、ポジティブ材料が多いほど初値が公募価格を上回る可能性が高くなります。あさくまの場合は、ポジティブ材料がネガティブ材料を大幅に上回っていましたが、ポジティブ材料とネガティブ材料が拮抗している場合やポジティブ材料の方が若干多いという場合は、初値が公募価格を上回らずに終わる可能性もあります。そのため、初心者がIPOの銘柄を選ぶ場合は、ポジティブ材料がネガティブ材料を大幅に上回る銘柄を選ぶに越したことはありません。

ただ、札証、名証、福証といったマイナー市場のIPOに関しては、ポジティブ材料が多くても、そもそもの注目度が低く不人気なために公募割れすることもあります。そのため、これらの市場のIPOに関しては注意が必要です。

まとめ

今回は、最近上場した会社の目論見書の内容の中から見るべきポイントをピックアップし、チェックした上で、実際に初値がどうなったのか、ということを解説しました。チェックすべき部分が色々あって一度に覚えるのは大変かもしれませんが、過去のIPOの目論見書を確認し、見るべきポイントをチェックすることで徐々に覚えていけます。これから予定されているIPOで気になる銘柄があれば、前回と今回紹介した内容を踏まえて、自分なりにポジティブ材料とネガティブ材料を整理した上で、投資するかどうか決めると良いでしょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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