IPO投資をする際には、これから上場予定の会社の目論見書を確認しよう

IPO投資

Link-Uの目論見書をチェックしてみよう

ここまでIPO投資で見るべきポイントを説明してきました。前回書いたとおり、IPO投資で必ずチェックしたい目論見書はページ数が非常に多く、最初から最後まで目を通すのは大変です。そのため、見るべきポイントを押さえて確認する必要があります。

そこで、今回は実際にこれから上場する予定の会社について、前回紹介した見るべきポイントを基にチェックしてみましょう。

今回チェックしたいのは、7月18日に上場が予定されているLink-Uという会社です。この会社は東証マザーズに上場予定です。事業内容はサーバー技術を用いたデータ通信、分析・処理を主としたインターネット事業ということですが、漫画アプリの開発やマルチメディア処理・ITインフラコンサルなどを行っている会社で、東京大学出身のメンバーが2013年に発足した会社ということのようです。業績は堅調で、企業規模も順調に拡大中という注目の会社です。

同社は売上の半分が小学館からの案件となっていますが、その割合は徐々に下がり、第4期に90%を超えていた割合が、第5期には81.8%まで下がっています。直近に関しては3Q時点で52.5%まで下がっているものの、小学館の売上が4Qに集中するようであれば3Q時点の割合よりも高くなる可能性があるので要注意です。現時点で小学館からの案件に依存している状況は変わらず、今後、どの程度他の案件の売り上げを伸ばしていけるかが鍵になると考えられます。とはいえ、事業内容としては「今どき」の会社といった感じで、人気になりやすい業種であると言えます。また、この会社は再上場の会社ではありません。

ちなみに、IPOの資金を何に使うかということについて、同社は顧客企業の増加に伴い通信トラフィックの増加や機能拡充に対応するための内部サーバー費用、人員補強や人材教育、オフィスの増床などとしています。このように、IPOで集めた資金を何に使うのか、ということについても目論見書で明示していますので(最近では、IPOの情報サイトなどにも掲載しています)、確認しておくと良いでしょう。Link-Uは成長企業ということもあって、さらなる成長のために、設備や人員等に投資したい、ということがここから読み取れます。

さて、Link-Uは今回、公募と売出のどちらも行うようです。公募に関しては、25万1,000株、売出26万2,000株、その他にオーバーアロットメントによる売出が7万6,900株となっています。これは、一般の投資家からの申し込みが多かったため、株価の急騰を抑えるために追加の売出をした、ということです。

公募より売出が多いことがネガティブであると言えますが、オーバーアロットメントによる売出があるため、主幹事会社が買い支えすることが考えられます。そのため、公募割れしても、大幅に値崩れすることはないのではないか、との予想をすることができます。とはいえ、ソフトバンクの事例もあるので要注意です(ソフトバンクもオーバーアロットメントによる売出があり、主幹事会社がシンジゲートカバー取引で買い注文を入れて買い支えようとしたものの、結局値崩れしています)。

次に想定価格ですが、こちらは2,580円となっています。この想定価格から算出される吸収金額は約15.2億円です。また、公募価格は2,820円です。Link-Uの仮条件は2,580円~2,820円ですので、公募価格が仮条件の上限になっていることが分かります。公募価格が仮条件の上限を下回っていないのは、ポジティブです。さらに、Link-Uは東証マザーズに上場予定ですが、公募割れするかしないかのラインとなる吸収金額は、東証マザーズの場合は30億円程度ですので、想定価格から算出される吸収金額の約15.2億円は、30億円以内に収まっていてポジティブです。

同社の業績については、冒頭でも書いたとおり堅調に推移しています。売上高もおおむね増収増益基調が続き(第5期は減収減益)、直近の第6期は過去最高売上と最高利益を達成すると見込まれています。これも好材料と考えられるでしょう。さらに自己資本比率は第5期で75.8%と安定しており、キャッシュフローに関しても、今3Q時点でフリーキャッシュフローがプラス、流動負債よりも流動資産の方が多く、かつ、現金及び預金が流動負債よりも多いことから、財務状況や資金繰りも安定していることが分かり、この点も好材料と言えます。

なお、同社の株主の状況を確認すると、ベンチャーキャピタルの保有株はありません。上位2名の大株主が80%以上の割合を占めていますが、ロックアップは180日間です。その他の大株主のロックアップはおおむね90日間となっているようですが、株式会社メディアシークが保有している株(保有割合9.05%。40万株)については、ロックアップが90日間または1.5倍となっていて、公募価格の1.5倍になった時に、ロックアップ期間を気にせずに売却できることが分かります。この点は特に注意が必要と言えるでしょう。40万株という株数は多く、これを同社が一気に売却した場合は、株価が下落する可能性が高まります。

Link-Uの目論見書から何が判断できるのか

ここまでLink-Uの目論見書の内容について確認してきました。同社の目論見書の内容から考えられるのは、

〇Link-UはIT技術を活かした今どきのメディアコンテンツ制作を行っている会社で、再上場ではなく新規上場。これまで、おおむね増収増益基調が続いていて、直近は過去最高売上・最高益が予想される上、財務状況や資金繰りも安定しているため、人気が集まりやすいと考えられる。実際、人気が集まったために、オーバーアロットメントによる売出もある。

〇公募と売出と両方あり、売出の方がやや多いのがネガティブ。ただ、オーバーアロットメントによる売出があるため、主幹事会社による買い支えがあると考えられることはポジティブ。

〇公募価格が仮条件の上限を下回っていないことはポジティブ。

〇株式会社メディアシークが保有する40万株が不安要素。メディアシークは90日間のロックアップ期間の他、株価が2,820×1.5=4,220円以上になれば保有する40万株の売却ができることになる。仮に初値が4,220円以上になったとして、これを上回る買い注文が入れば株価は上がるが、そうならなかった場合は買い支えられず下落してしまうため、この点が懸念事項と言える。

このように、Link-U株に関してはポジティブ要素が多いものの、人気が集中し、初値が4,220円以上になった時に下落する可能性があることが不安要素といえます。仮に初値が4,220円以上にならなかった場合は、利益確定売りでいったん下落することがあっても、その後は再び4,220円を目指して上昇する可能性が考えられます。ただ、大株主である株式会社メディアシークはベンチャーキャピタルではありません。そのため、その後の予想を立てにくいのも事実です。もしもベンチャーキャピタルが大株主になっていて、株式会社メディアシークのようにロックアップ期間の他に「株価が〇倍になった場合にロックアップが解除される」という条件があれば、その場合はロックアップ解除となる価格まで株価が上昇する可能性が高くなります。というのも、ベンチャーキャピタルは、その株を売りぬいて利益を出す必要があるからです。ベンチャーキャピタルが自己資金でその会社の株を買っているケースもありますが、他の顧客から集めた資金を投資しているケースも多いため、利益を出さなければならない事情があるのです。

このことからLink-UのIPOに関しては、ポジティブ要素が多く初値は公募価格を超えてくる可能性が高いものの、初値が4,220円を超えた場合は要注意ということが言えます。もしも初値が4,220円を超えるようならば、いったん利益確定売りをしてしまった方が良いかもしれません。

まとめ

今回は、これから上場予定の会社の目論見書の内容の中から見るべきポイントをピックアップしてチェックしてみました。目論見書は分量も多く、何をチェックすべきかわかりづらいのですが、チェックポイントを押さえるだけで、その後の戦略を立てやすくなります。今回紹介した内容を参考に、他のIPOについても自分なりの戦略を考えてみると良いでしょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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