為替相場の動向と株式投資

株式投資の基本

為替の動向が会社の業績に影響を与えることもある

ネット証券の誕生により、以前に比べて株の取引はハードルが手数料面でぐっと下がり、より身近なものへと変わりました。また、株以外では、FXや商品先物などもネット証券やネット取引のできる商品会社が増えたことから取引する人が増えています。中でもFXは、株と同じくらいメジャーになった投資商品であると言えるのではないでしょうか。規制が入ったために以前ほどのレバレッジをかけられなくなりましたが、それでも株の信用取引よりも大きなレバレッジがかけられるため、資金の少ない人でも気軽に取引できる投資商品として知られています。

さて、そんな為替ですが、実は株とは密接な関係があります。円安だと株高になりやすく、円高だと株安になりやすいという話を耳にしたことはありませんか?実際には、円高なのに株高になることもあるのですが、円安株高、円高株安という傾向があるのは事実です。なぜなら、日本にはトヨタやソニーといった世界的メーカーが数多くあり、そのようなメーカーが輸出をする際、円安だと相手先国の現地通貨の方が高くなり、相手が買いやすくなるからです。例えば、1つ100円の商品を米国の会社に輸出する場合、1ドル100円と1ドル80円では後者の価格が上がってしまいます。なぜなら、1ドル100円の場合は1つ1ドルで買えますが、1ドル80円だと1つ1.25ドルになってしまうからです。つまり、円高だと高くなってしまい、相手国の会社にとっては買いにくくなってしまいます。反対に1ドル120円の場合は100円の商品が約0.83ドルということになりますので、相手先国の会社にとっては安くなって買いやすい、ということになります。

このことから分かるように、基本的に円安は輸出企業にとってメリットなので、為替相場が円安に動けばトヨタなどの輸出企業の株価は買われて日経平均株価が上昇しやすくなりますし、反対に円高になれば下落しやすくなります。円安になることで業績の拡大が期待でき、反対に円高になることで業績の悪化が懸念されるため、輸出企業の株は、為替変動に株価が左右されやすくなるのです。

為替の影響を受けやすい業種は、やはりグローバル展開しているメーカーが多いようです。例えば、先ほど書いたトヨタやソニー、ホンダ、パナソニックといった会社は、円高が業績押下げ要因になってしまいます。ちなみに、日本の自動車メーカーのほとんどが円高だと減収減益になってしまいます。他にも、パナソニックやソニー、日立製作所といった電機メーカーも、円高だと減収減益になってしまいます。

為替の影響で減収減益になる会社は他にもあります。例えば、資生堂やエーザイなどといったメーカーも減収減益になります。為替の影響で減収減益になるメーカーについては東洋経済などの記事で特集されていることもありますので、どの程度の影響を受けるのか気になる場合はチェックしてみると良いでしょう。

このように、日本の、特にメーカーや商社は為替変動によって業績が大きく左右される傾向にあります。そのため、これらの会社の業績の動向については、為替変動もチェックする必要があるのです。為替相場が円高に動けば、これらの会社の株は業績悪化が懸念されて売られやすくなります。例えば、ドル円が1日で1円、2円下がるような円高トレンド発生時は、円高を嫌気し、これらの銘柄は売られやすくなるでしょう。

会社が発表する「想定為替レート」に注目しよう

為替相場の影響を受けやすい銘柄を取引する際、必ずチェックしなければならないのは、各企業が出している想定為替レートです。為替変動の影響を受けやすい会社の場合、決算資料などに「1ドル110円」「1ドル105円」など、その会社独自の想定為替レートが記載されています。

例えば、今年の想定為替レートが1ドル110円の会社があるとします。その後、米国の利下げや米中貿易摩擦など円高になりやすい要因が発生して円高トレンドとなり、1ドル105円まで下落したとします。そうすると、その会社の想定為替レートは、実際の為替レートよりも円安ということになります。円安がメリットとなる会社の場合は、円高になれば会社計画の数字を達成できない可能性が高まります。その後も米国の利下げや貿易摩擦など、ドル円相場の下押し要因が多い中で、会社が想定為替レートを変更しないようであれば、会社の決算日までに1ドル110円台に乗せるかどうか、かなり厳しくなってきます。

一方、1ドル105円の想定為替レートを出している会社があるとします。円安トレンドが続き、その会社の決算日までに1ドル110円を狙う展開になりそうなのにも関わらず、会社計画が保守的で、想定為替レートの変更を行わないようであれば、この会社の業績は会社計画を上回る可能性が高くなります。

このように、会社の業績動向を予想するためには、想定為替レートを確認することも大切です。特に海外で事業展開している会社に関しては、為替が業績に与える影響は見逃せません。そのため、その会社の想定為替レートがどれくらいなのかを必ず確認しましょう。

なお、会社によっては、ユーロ円の想定為替レートを掲載している会社もあります。特に欧州での売上が高い会社については、ユーロ円の想定為替レートにも目を向けましょう。

その年の為替の大まかな動向を考えよう

さて、会社がどんなに想定為替レートを発表したところで、実際の為替相場がどうなるかは分かりません。ですが、その年の為替相場の方向性をある程度予測することはできます。ポイントはやはり政策金利です。そして、それを予想する上で、その国の経済指標の推移や政治動向を踏まえる必要があります。

例えば米国に関しては、今年の初めにパウエルFRB議長がそれまでのタカ派的姿勢から一転、ハト派的姿勢を示しました。その背景には米中貿易摩擦の激化があります。米国による対中追加関税は、2018年7月に第1弾を発動して以降、今までに第3弾まで発動しており、今年9月には第4弾の発動が予定されています。

米中貿易摩擦に関しては、米中双方の事情を考慮すると着地点が見えず、協議は長引くだろうとの予想が当初からされていました。2018年の終盤から、米国の経済指標が米中貿易摩擦の影響を受けて徐々に伸び悩んできたのに加え、年末の米国の株安もあって、2019年は米国が利上げ回数を引き下げるとの見方がされていたのです。そして、今年1月のFOMC後、パウエルFRB議長は年内の利上げを見送ることを表明しました。

それまでドル円は、米国の利上げ観測により円安基調で推移していました。しかし、利上げ見送りとなったことから、円安が進みにくくなってしまいました。それどころか、米中貿易摩擦の激化を受け、ドル円相場は下押し圧力が強くなるだろうと予想されたのです。

今年1月3日には、米アップル社が売上高の下方修正を発表したことを機に、オセアニア市場でドル円が1ドル104円まで急落してしまいました。その1時間後には1ドル107円まで持ち直しましたが、2018年12月31日のニューヨーク市場の終値(1ドル109円台)水準までの回復には至りませんでした。2018年12月の前半には1ドル112円~114円台で推移していたことを考慮すると、戻りはだいぶ弱く、いまだにその時の水準まで戻らずにいます。その原因は、米中貿易摩擦の長期化による世界経済の減速リスクの高まりと、それに伴うFRBの利下げシフトです。

今年の初めに「年内の利上げを見送る」としていたFRBですが、その後、利下げを示唆するようになり、7月末に行われたFOMCで、ついに0.25%の利下げを発表しました。さらに、トランプ米大統領は「もっと利下げをするべき」とFRBへの圧力を強めています。つい先日、米国は対中追加関税第4弾の9月発動を発表したことから、今後もドル円には下押し圧力がかかると考えられ、今年は概ね円高地合いが続くと予想されます。

このように、為替相場の日々の細かい値動きを予想することは難しくても、大まかな流れを予想することは可能です。その国の景気や政治動向の流れを読み、「政策金利がどうなりそうか」ということを考えれば、各企業の想定為替レートが実際の為替レートより円安なのか、あるいは円高なのか、ある程度分析することが可能です。そのため、株に関するニュースだけでなく、為替に関係するニュースにも目を向けると良いでしょう。

まとめ

今回は、為替相場が株に与える影響について説明しました。自動車や電機などのメーカーの銘柄は、為替相場の動向に左右されやすい傾向にあります。このような銘柄を取引する場合は、その会社の想定為替レートを確認し、実際の為替レートの今後の動向と比較して、円安なのか、円高なのか考えてみましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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