株と原油価格との関係

株式投資の基本

先物取引をしている人にとって、原油価格は馴染み深く、またガソリンや灯油の価格にも直接影響するので生活面でも大きな関係があります。しかし、株式投資をしている人の中には、原油価格と株に関係性があるとは思っていない人も少なくはないでしょう。実は、この2つは関係があるのです。今回は株と原油価格の関係について、解説していきます。

これまでの原油価格の動き

株には様々なアノマリーがあり、中にはこれまでの経験則から生じたものもありますが、根拠が説明しづらいものなどもあります。株と原油価格の関係についても、このアノマリーの一種かと思われるかもしれませんが、間違いなく関係性があるということを解説するために、まずは原油価格の動きから解説していきます。

まず、原油価格の動きを見ていくと、昨年の秋からは徐々にその価格が上昇傾向にありました。その理由として、近年発展が著しい中国をはじめとした新興国に加えて、日本やアメリカ、ヨーロッパ諸国などの先進国も含めて世界中が好景気を迎えているということがあります。さらに、そう遠くないうちにサウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコのIPOが実施されるといわれていたことも、原油価格の上昇につながりました。なぜかといえば、IPOでなるべく高値を付けたいがために、原油の供給を制限するのではないかという見方がされていたのに加えて、これまでは原油価格の上昇を抑える役割を担っていたアメリカのシェールオイルも供給が伸び悩んでいたため、その役割を果たせずに原油価格が上昇してしまったのです。

こうして上昇を続けていった原油価格は、今年に入ってからも4月まではその傾向が続くことになりました。イラン産の原油禁輸の適用除外措置が打ち切られることが決定したことや、ベネズエラの政情不安により、原油の供給が不足するのではないか、と考えられていたためです。しかし、この状況も5月になると一変します。なぜなら、米中貿易摩擦が再燃したからです。

アメリカは今年5月5日に、中国製品のうちおよそ2000億ドル相当の品目に対して、関税を引き上げることを表明しました。これまで10%だった関税を25%に引き上げることにして、中国に対する圧力を強めようとしたのです。中国は国際市場全体のおよそ13%を占める、日量約1300万バレルの原油需要があったのですが、この関税引き上げによって今後米中貿易摩擦が激化することが懸念され、それによって中国のアメリカに対する輸出が減少することが考えられました。また、中国の生産活動も勢いを落とし、生産活動のエネルギー源であった原油の需要も落ち込むのではないかと予想されたため、原油株価は下落することとなりました。

また、6月13日には原油輸送の要衝であるホルムズ海峡において石油タンカーが攻撃を受けたこと、6月20日にイランが米国の無人偵察機を撃墜したこと等を原因として、アメリカとイランの対立が深刻化しました。アメリカでは「タンカー攻撃はイランの仕業」と非難し、6月24日にはイランの最高指導者のハメネイ師を含む複数の政府高官の金融資産を凍結する措置を行いました。一方、イランはタンカー攻撃への関与を否定していて、アメリカが行った制裁に対して非難声明を出しています。こうしたアメリカとイランの対立によって、原油の供給がひっ迫するとの見方がなされたことから、原油価格は再び上昇しています。

原油価格が株価に及ぼす影響

株を発行しているのは株式会社ですが、株式会社には様々なものがあり、中には原油価格と大きく関わる企業も少なくありません。最もイメージしやすいのは、石油元売り会社となるコスモエネルギーや出光興産などでしょう。こういった会社では、原油やガソリンの在庫を大量にストックしているため、原油価格の上昇は高値売りのチャンスとなり、多くの利益を得ることができます。また、国際石油開発帝石などは国内最大手の原油・ガス開発生産の企業であることから、原油価格が上昇すれば株価も上昇し、下落すれば株価も下落していきます。

他にも原油価格の影響を受けやすのは商社です。特に、三井物産や丸紅、伊藤忠商事、住友商事などの大手総合商社の株価は、原油価格の影響を大いに受けます。なぜかというと、このような大手総合商社は、資源やエネルギーに対しての上流権益を持っているので、原油などのコモディティ価格が上昇した場合はその恩恵を受けることができるからです。例えば、1バレル当たりの原油価格が1ドル上昇することで、年間の増益は28億円にもなると試算される商社もあるほどです。

大手商社は原油ばかりではなく、金属資源の権益や生活産業など、様々なポートフォリオを抱えているため、事業全体の影響を受けて株価が変動することになるのですが、市場の中では原油価格の影響が大きい銘柄群であるといえるでしょう。

さらに、一見、原油価格との関係性が薄いように見える通信事業を中心としているソフトバンクグループも、原油価格と株価の間に関係性が見られます。一般的に、原油価格が上昇する局面を迎えると市場にはリスクオンムードが高まりやすいので、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどを抱えるソフトバンクグループはそのような局面で評価されやすく、原油価格が上昇すると同社の株価も上昇する傾向があると考えられます。

中東ファンドの存在

原油価格に株価が影響を受ける原因としては、中東ファンドの存在も忘れることができません。世界中の株式市場に強い影響を及ぼしている中東ファンドは、石油輸出に伴う経営黒字、いわゆるオイルマネーを資金としているので、原油価格はこの資金に大きく関わってくるのです。この資金は数百兆円にも上るといわれているので、市場に及ぼす影響は見逃せません。また、原油価格が下落した場合は中東全体で景気が悪化することになるので、その場合の影響もかなり大きいものとなるでしょう。

原油価格が下落した場合、中東ファンドは手元に現金を置こうとするので世界中の株式市場から手を引くことになります。そうすると、多くの銘柄に売りが増えることで、株価も原油価格の後を追うように下落することになるのです。

米国株と日本株の関係

米国株と日本株にはもともと深い関係性があり、米国株が下がった場合は日本株も下落する傾向があります。そして、アメリカの主力となっているなっている企業にはエネルギー関連企業が多く、NYダウ平均の構成銘柄にも30社中2社がエネルギー関連企業となっています。そのため、原油価格が下がると米国株も下落していくことになり、それに引きずられて日本株も下落していくという関係ができるのです。

つまり、原油価格と日本企業の株価においては、直接的な関係性と間接的な関係性の両面からの相関性があります。したがって、直接原油価格が影響しないと思われる企業の株価も、原油価格の絵強を少なからず受ける可能性がある、ということになります。株式投資の際は、決して原油価格を軽んじないようにしましょう。

まとめ

原油価格と株価には相関性があるといわれて、すぐにピンとくる人はあまりいないでしょう。しかし、実際には様々な形での関係性があるので、日本企業の株は原油価格に少なからず影響を受けるのです。
中には、直接的に影響を受けることになる石油元売り企業などもありますが、それ以外にも中東ファンドによる影響や、アメリカのNYダウ平均の下落に伴って受ける影響など様々な形での影響があるので、株式投資をする際は決して原油価格の変動を軽んじないように気を付けましょう。

執筆者:佐藤真奈美より

 はじめまして、当サイトである『投資塾』で記事の執筆を担当させて頂いております、佐藤真奈美と申します。現在、複数の投資関連のメディアサイトに相場予想や投資関連の解説等の記事を寄稿しておりますが、『投資塾』では、株式投資のニュース、経済指標、金融政策等、「市場参加者が、何を見ているか」に重点を置き、株式投資の初心者にも分かりやすいよう、他では知れない情報の提供に努めさせて頂いております。

執筆者:佐藤真奈美について

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